政情不安が続くミャンマーで、中国系マフィアにより拉致・監禁され、特殊詐欺などを強要されている人が21か国6000人以上いると指摘されています。そして今、犯罪組織が人材確保のため狙いを定めているのが、私たち日本人だというのです。なぜ日本人が標的に?卑劣な“監禁”手口とは?ジャーナリスト・多田文明氏の解説です。
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■“映画関係者のSNS”からオーディションに招待され…俳優が拉致・監禁「特殊詐欺の訓練を受けていた」
2025年1月3日、映画のオーディションのため、タイへと渡った中国人俳優・王星さん。中国からバンコク・スワンナプーム国際空港に入り、手配された車で移動していましたが、ミャンマー国境付近のターク県・メソトで道中やり取りしていたガールフレンドへの連絡が途絶え、行方不明になりました。
香港メディア『星島日報』によると、その4日後に保護された王さんは、「ミャンマーの国境からほど近い50人程度がいる建物で、監禁されていた。全員が髪を剃らなければならず、そこでタイピングなどの特殊詐欺の訓練を受けていた」と語りました。
中国メディア『上海日報』によると、王さんは海外での俳優活動を視野に入れていた矢先で、2024年12月29日に、実存する映画関係者のSNSからタイ映画のオーディションに招待されたといいます。ただ、この映画関係者のSNSアカウントは犯罪組織により乗っ取られていた可能性があることが発覚。“なりすまし”は業界の専門用語を使い、巧みに誘ってきたということです。
『星島日報』によると、王さんは「数年前にもオーディションでタイに行ったことがあったので、普通だと思った。国境を越えた後に騙されたことに気付いたが、怖くて抵抗できなかった」と話しました。
Q.王さんとしては「本物の映画関係者だ」と思ってしまいますよね?
(ジャーナリスト・多田文明氏)
「詐欺グループなので、本物の情報に見せかけて騙すのが上手いわけです。求人やオーディションなどは、本当に気を付けなければいけません」
■拉致・監禁の目的の一つに『特殊詐欺への加担』 拒否すれば食事ナシ・激しい暴行も…被害者が語る卑劣な手口
実は、王さんが行方不明になったタイとミャンマーの国境周辺は、犯罪組織の拠点となっています。軍によるクーデターの後『軍事政権』と『武装組織』が内戦状態にあり、国境周辺を実質支配しているのが武装組織で、無法地帯だということです。
ミャンマー情勢に詳しいジャーナリスト・永杉豊氏は、「中国系犯罪組織が現地の武装組織と組んでいるとみられ、マフィアタウンを形成している非常に危険な地域」だと話しています。