80代母の介護と団地暮らし:ちょうどいい距離感で見つけた幸せ

都会のマンションから築50年の団地へ――。80代の母の介護をきっかけに、49歳で大きな転機を迎えた著者のきんのさん。扶桑社から出版された『54歳おひとりさま。古い団地で見つけた私らしい暮らし』では、慣れない介護生活での葛藤や発見、そして母と娘の新しい関係性が描かれています。この記事では、きんのさんの体験を通して、介護と暮らしのヒントを探ります。

介護の現実はイライラの連続?

介護は想像以上に大変なもの。大切なものをどこにしまったか忘れてしまったり、入れ歯が洋服ダンスから出てきたり…。認知症の症状のひとつとして、記憶障害や見当識障害が起こることがあります。 高齢者介護の現場では、このような予想外の出来事が日常茶飯事です。 東京都在住の介護福祉士、山田花子さん(仮名)は、「介護される方の行動は、私たちには理解し難いこともありますが、ご本人にとっては何か理由がある場合もあります。焦らず、まずは落ち着いて状況を把握することが大切です」とアドバイスしています。

高齢者の介護の様子高齢者の介護の様子

きんのさんも、母の不可解な行動に戸惑い、イライラしてしまうことが多かったと言います。つい感情的に母を責めてしまい、後で自己嫌悪に陥ることも少なくなかったそうです。 しかし、介護を通して母の生涯を改めて知る中で、母と娘の関係性を見つめ直すきっかけにもなったと語っています。

笑い合うことで生まれる心のゆとり

きんのさんは、仕事と介護の両立で余裕のない日々を送る中、母との口論が増えてしまいました。 「どうしてこんなことになったの!」とつい感情的に言ってしまい、後から反省することも多かったそうです。 そんなある日、探し物をしていた財布が冷蔵庫から見つかるという出来事がありました。疲れていたきんのさんは、思わず笑ってしまい、母もつられて笑ったと言います。

この出来事をきっかけに、きんのさんは介護における笑いの大切さを実感しました。 「私が笑えば母も笑う。笑顔でいることが、お互いにとって一番幸せなこと」だと気づいたのです。 介護の専門家も、介護者と要介護者の良好な関係性を築く上で、ユーモアや笑顔は非常に重要だと指摘しています。

笑顔の親子笑顔の親子

ちょうどいい距離感を見つける

きんのさんと母の性格は正反対。きんのさんは心配性でせっかち、母はのんびり屋で楽天家。だからこそ、お互いを理解し合うことが難しく、衝突することも多かったと言います。しかし、介護を通して、お互いの違いを受け入れ、尊重し合うことの大切さを学んだそうです。

認知症介護においては、適切な距離感を保つことが重要です。 過干渉になりすぎず、かといって突き放しすぎず、相手を尊重しながら寄り添うことが大切です。 きんのさんは、団地暮らしという新しい環境の中で、母とのちょうどいい距離感を見つけ、穏やかな日々を送っています。

介護は人生の学び

介護は大変なことも多いですが、同時に多くの学びを与えてくれる貴重な経験です。 きんのさんの体験は、私たちに介護の現実と、その中で見つける幸せのヒントを教えてくれます。 介護に直面している方、これから介護が始まるかもしれない方にとって、きんのさんの物語はきっと心に響くものとなるでしょう。