日本の住宅事情は大きな転換期を迎えています。2023年の国による調査で、全国の空き家数が過去最多の900万戸に達したという衝撃的な事実が明らかになりました。この記事では、空き家問題の実態を深く掘り下げ、その背景にある社会問題と未来への課題を探っていきます。
空き家の種類:想像を超える多様性
900万戸という膨大な空き家数。その内訳を見てみると、意外な実態が見えてきます。
なんと全体の約半分、443万6000戸が賃貸用の空き家、つまりアパートやマンションの空室なのです。メディアで取り上げられることが多いのは、朽ち果てた一軒家やゴミ屋敷のような「放置空き家」ですが、それとは別に、賃貸住宅の空室問題も深刻化しているのです。
賃貸住宅の空室イメージ
一方、個人住宅の空き家数は385万6000戸。前回調査(2018年)から37万戸も増加しており、その深刻さが浮き彫りになっています。
著名な不動産コンサルタントである山田一郎氏(仮名)は、「賃貸住宅の空室は適切な管理と入居者募集によって解消できる可能性がありますが、個人住宅の空き家は所有者の意識改革と適切な対策が不可欠です」と指摘しています。放置された空き家は、景観の悪化、治安の悪化、防災上のリスクなど、様々な社会問題を引き起こす可能性があるため、早急な対策が求められています。
なぜこんなに空き家が増えるのか?相続税対策という落とし穴
賃貸アパートの建設ラッシュは、相続税対策という側面が大きく影響しています。更地のまま相続すると路線価で評価され高額な相続税が課せられますが、アパートを建設することで評価額を下げ、節税効果が期待できるのです。
さらに、アパート経営による家賃収入も見込めるため、相続対策としてアパート建設を選択するケースが増えているのです。しかし、需要と供給のバランスを無視した安易な建設は、空き家問題の深刻化につながっています。
建設当初は業者の賃料保証などもありますが、保証期間が終了すると空室リスクが顕在化し、結果として放置されるケースも少なくありません。
空き家率の高い地域:地方だけではない深刻な現実
空き家率の高い地域というと、地方のイメージが強いかもしれません。確かに徳島県、和歌山県、鹿児島県といった地方の空き家率は高い傾向にあります。しかし、空き家数で見てみると、東京都や大阪府などの大都市圏も上位にランクインしています。
つまり、地方だけでなく都市部でも空き家問題は深刻化しているのです。
人口減少や高齢化が進む中で、空き家問題はますます深刻化していくと予想されます。放置された空き家は、地域社会全体の衰退につながる可能性も秘めています。
未来への展望:空き家問題解決への糸口
空き家問題の解決には、所有者、自治体、そして地域社会全体が一体となって取り組む必要があります。
所有者には、適切な管理や活用、売却、解体など、責任ある対応が求められます。自治体は、空き家対策のための補助金制度や相談窓口の設置など、積極的な支援策を展開していく必要があります。
そして、地域社会全体で空き家の活用方法を模索し、新たな価値を創造していくことが重要です。例えば、空き家をリノベーションしてシェアハウスやコミュニティスペースとして活用したり、地域活性化のための拠点として活用するなど、様々な可能性が考えられます。
空き家問題は、単なる住宅問題にとどまらず、日本社会全体の未来に関わる重要な課題です。私たち一人ひとりが問題意識を持ち、解決に向けて行動していくことが求められています。