【主張】憲法公布73年 9条欠陥正面から論議を


 現憲法の公布から73年を迎えた。日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しつつあるが、日本が十分対応できているとは言い難い。

 「平和主義」を掲げる憲法第9条が、日本の平和を守る妨げとなっている。皮肉な話だが、この点に気づいて憲法改正を実現しなければ、いつまでたっても平和を保つための抑止力を整えることは難しい。

 北朝鮮は10月31日、短距離弾道ミサイルを発射した。弾道ミサイル防衛(MD)の迎撃網をかいくぐる新型の短距離弾道ミサイル戦力をつくる一環だ。ロシア製弾道ミサイル「イスカンデル」を模しており、ミサイルの下降段階で弾道軌道から外れて飛行し、目標に着弾する。弾道を計算して終末段階で迎撃することが困難になる。北朝鮮はいずれ、核弾頭搭載可能なノドンなど対日攻撃用の準中距離弾道ミサイルの「イスカンデル化」をもくろむだろう。

 MDや、ミサイル発射基地を叩(たた)く敵基地攻撃能力だけでは十分でない。有事に日本を攻撃しようとする侵略国の独裁者の居場所や重要軍事基地を叩く「敵地攻撃力」を保有することが、抑止力の確保につながる。だが、9条に由来する「専守防衛」が妨げている。

 中東海域の日本関係船舶の安全確保のため、政府は海上自衛隊の護衛艦などを派遣する方針だ。

 「調査・研究」名目の派遣だが日本関係船舶が実際に危機に直面すれば、自衛隊が「海上警備行動」の発令で守ることになる。一定の効果は期待できるが、あくまで警察権の行使であり、撃退すべき相手に対する「危害射撃」の度合いには制約がある。自衛隊が国際法上の軍隊として武器を使用できる場合と比べて手間取り、日本側の被害が増す恐れもある。

 これも9条のもと、自衛隊が国際法上の軍隊として行動できる「防衛出動」が、「外国軍隊によるわが国に対する計画的、組織的な武力攻撃」などがあった場合に限られ過ぎているためだ。

 9条は、自衛隊を「普通の民主主義国の軍隊」と位置づけない。このため、国民や自衛隊の現場の危険は増え、抑止力の充実は妨げられている。

 国会などで憲法改正論議の進展が期待される。「自衛隊明記」は当然として、国民を守らない9条の欠陥とその是正についても正面から論じてもらいたい。



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