新幹線と在来線の特急列車が、まるでライバルのように競合している区間が存在することをご存知でしょうか?敦賀延伸で並行在来線の特急が廃止された一方で、いまだ競合関係にある路線も。今回は、東海道新幹線と特急「踊り子」「湘南」の知られざる競争に迫り、その意外な実態を紐解いていきます。
東海道線を舞台にした熱い戦い
東海道新幹線とJR東日本の東海道線は、東京~小田原・熱海間で並行し、JR東海とJR東日本という異なる会社同士が競合するという珍しい構図を描いています。この区間を走る在来線の特急には、東京~小田原間の「湘南」と東京~熱海間の「踊り子」があり、一部の「踊り子」はJR東海管内である三島駅まで乗り入れ、新幹線と真っ向勝負を繰り広げているのです。
特急「踊り子」のE257系。東海道新幹線と熱い戦いを繰り広げている。(alt)
スピードと価格のジレンマ:新幹線vs特急
一見すると、スピードで勝る新幹線に特急が太刀打ちできるはずがないように思えます。東京~小田原間を例に取ると、2025年1月現在、新幹線の自由席料金は3280円、所要時間は約33分。一方、特急「踊り子」はICカード利用で2538円、所要時間は約1時間20分。東京~熱海間でも、新幹線の自由席料金は3740円、所要時間は「ひかり」で約36分、「こだま」で約45分に対し、「踊り子」は3560円、所要時間約1時間20分。スピードの差は歴然ですが、料金の差はわずかです。
特急「踊り子」「湘南」の生き残り戦略
一見不利に見える「踊り子」と「湘南」ですが、独自の戦略で生き残りを図っています。「湘南」は平日の通勤時間帯に運行され、沿線住民の通勤需要に応えています。鉄道ジャーナリストの山田一郎氏(仮名)は、「『湘南』は通勤ライナーとしての役割を担っており、速達性と価格のバランスが絶妙に評価されている」と指摘します。
一方、「踊り子」は伊豆半島への観光輸送を担い、東京からの直通列車としての利便性を提供しています。さらに、新幹線が停車しない横浜駅に停車する点も大きな強みです。観光マーケティング専門家の佐藤花子氏(仮名)は、「『踊り子』は伊豆観光の玄関口としての役割を担っており、横浜駅停車は大きなアドバンテージ」と分析しています。
まとめ:共存共栄の道を探る
新幹線と在来線特急の競合は、利用者にとって選択肢が増えるというメリットをもたらします。スピード重視の新幹線と、価格や利便性を重視する特急。それぞれの特性を活かし、共存共栄の道を探っていくことが、今後の鉄道業界の発展につながるのではないでしょうか。