近年、世界の大都市でネズミの個体数が増加傾向にあるというショッキングな研究結果が発表されました。一体何が原因なのでしょうか?本記事では、その背景や都市への影響、そして私たちにできる対策について詳しく解説します。
温暖化がネズミ増加の主要因?
米リッチモンド大学のジョナサン・リチャードソン教授(生物学)率いる研究チームは、世界16都市のネズミに関する長期的なデータを分析。その結果、ワシントンD.C.、サンフランシスコ、トロント、ニューヨーク、アムステルダムなど11都市でネズミの数が大幅に増加していることが判明しました。
alt ネズミがゴミの中を移動している様子
研究チームは、人口密集や都市部の緑地減少も要因の一つとしながらも、最大の原因は平均気温の上昇、つまり地球温暖化だと指摘しています。冬場の気温上昇により、ネズミの活動期間が延長し、繁殖期も長くなったことが増加の主な理由です。
温暖化の影響で植物の生育期間も長くなり、ネズミの餌となるものや隠れ場所が増加していることも指摘されています。害獣対策の専門家、マイケル・パーソンズ氏(今回の研究には不参加)は、「温暖化に伴い、食べ物やゴミの匂いはより遠くまで届くようになり、ネズミを引き寄せている」と解説しています。
ネズミ増加による都市への脅威
ネズミの増加は、都市に深刻な問題を引き起こします。インフラの損傷、食中毒の発生、配線をかじることによる火災など、その被害は多岐にわたります。今回の研究では、米国のネズミによる経済損失は年間270億ドル(約4兆円)にも上ると推計されています。
さらに、コーネル大学の害獣専門家、マット・フライ氏(今回の研究には不参加)によると、ネズミは50種類以上の病原菌を媒介し、レプトスピラ症などの深刻な感染症を引き起こす可能性があります。糞尿、唾液、寄生虫などを介して感染するため、衛生環境への影響も懸念されます。
ネズミ問題への対策:駆除から予防へ
リチャードソン教授は、ネズミの数が減少した都市の事例から学ぶべきだと提言。これらの都市では、自治体がネズミ対策の啓発活動を行い、予防策に予算を投入したことが成功の鍵となっています。
alt 公園でネズミを追いかけるゴールデンレトリバー
殺鼠剤の使用は既に繁殖してしまったネズミへの対処療法に過ぎず、根本的な解決には繋がらないとリチャードソン教授は指摘。生ゴミや廃材の適切な処理など、ネズミを寄せ付けない環境づくりが重要です。温暖化が進む中、ネズミ問題への対策を怠れば、事態はさらに深刻化すると警鐘を鳴らしています。
私たちにできること
ネズミ問題は、都市に住む私たち一人ひとりにとって他人事ではありません。ゴミの適切な処理、家の周りの清掃など、できることから始めて、ネズミの繁殖を防ぎ、安全で衛生的な都市環境を守りましょう。