相川七瀬と矢井田瞳が語る音楽人生:デビューの原点から「未完の美」まで

大阪出身の二人が音楽と出会うまで

大阪市東淀川区出身の相川七瀬(50)と豊中市出身の矢井田瞳(47)は、これまでほとんど会話を交わしたことがなかったという。しかし、相川七瀬がホストを務める「BIG BANG対談」第6弾で、ついに二人の熱いスピリットが共有された。共に大阪をルーツに持つ二人は、音楽との出会いやキャリア形成について語り合った。

矢井田瞳は、豊中市立第九中学校の卒業生として藤井隆を、大学の同期として南海キャンディディーズの山里亮太を挙げ、意外な共通の知人とのエピソードを披露。特に山里亮太については、大学時代にオーラがあり、おしゃれで「すごくカッコよかった」と語り、蒼井優との結婚を心から喜んだという。相川もまた、山里の人柄を称賛し、二人の会話は和やかな雰囲気で進んだ。

音楽への情熱とキャリアの決断

矢井田が初めてギターを手にしたのは大学生になってから。高校卒業まではスポーツ少女だった彼女が、新しい挑戦として選んだのが弦楽器だった。わずか2年後にはシンガー・ソングライターとしてデビューを果たし、そのスピード感は相川を驚かせた。矢井田は、音楽を始めるのが遅かったことや音楽学校に通っていないことがコンプレックスだった時期もあったと明かした。

一方、相川は中学1年生の12歳で既にプロの歌手になることを決意。「ここは自分の居場所じゃない」「大阪を出て行きたい」という強い思いが原動力だったという。矢井田が音楽と学業の「二足のわらじ」を履いていた時期を振り返る中、相川はデビュー当初の矢井田を「すっごい元気なコが出てきたぞ」と印象深く記憶していると語った。

大阪出身の相川七瀬(左)と矢井田瞳が笑顔で対談大阪出身の相川七瀬(左)と矢井田瞳が笑顔で対談

大学卒業後に「音楽一本で勝負する」と覚悟を決めた矢井田は、「根拠は何もなかったけど、“大丈夫だ”と自分に思い込ませていた」という。この「根拠のない自信」は相川も共感するところであり、二人のプロとしての共通の精神性が垣間見えた。

大人になってからの新たな挑戦と学び

相川七瀬は現在、大学院生として学んでいる。大人になってからの挑戦には大きなパワーが必要だと語る相川に、矢井田も「なんの躊躇もなく最初の一歩を踏み出せる相川さんには、尊敬しかありません」と賛辞を送った。相川は大学院入学時のモチベーションは「博士号を取ること」だったが、その大変さは計り知れないものだったと苦笑いを見せた。それでも、「自分がやりたいと言い出したことだし、やっていておもしろい」という気持ちが継続の原動力となっている。

矢井田もまた、音楽の専門学校に入りたいという思いを15年前から抱き続け、毎年パンフレットを取り寄せては熟読するも、なかなか一歩を踏み出せずにいるという。彼女が学びたいのは、音楽理論やPro Toolsの使い方といった、自身の知識の「穴」を埋めるための専門的なスキルだ。

デビュー25周年・30周年と「未完の美」

今年、矢井田瞳はデビュー25周年、相川七瀬は30周年という節目の年を迎えた。相川は3枚のミニアルバムと特別企画盤『BIG BANG』を、矢井田は25周年記念アルバム『DOORS』をリリース。矢井田は『DOORS』で「新しい扉を開けられた」と感じつつも、「これが最後の一枚になるかもしれない」という思いが強くなっていると心情を吐露した。相川もこの感覚に共感を示し、全エネルギーを注ぎ込んで作品を作る感覚だと語った。

自身のギターを抱え撮影に応じる矢井田瞳自身のギターを抱え撮影に応じる矢井田瞳

しかし、相川は最近、「やり残したことを必ずひとつだけ作る」ようにしていると語る。日光東照宮の陽明門に見られる「未完の美」の概念に触れ、あえて余地を残すことで、作品完成の次なる瞬間から気持ちが次へと向かうと説明した。矢井田はこの考えに「目から鱗」だと感銘を受け、今後の創作活動へのヒントを得た様子だった。相川は、そうすることで「これが最後かもと思わないどころか、無限にやりたいことがある」という境地に至ると述べ、矢井田の未来に期待を寄せた。

終わりに

相川七瀬と矢井田瞳、二人のシンガー・ソングライターが語る音楽への深い愛情と、キャリアを切り拓いてきた覚悟、そして新たな挑戦への意欲は、多くの読者に共感と勇気を与えるだろう。それぞれの節目を迎え、さらなる進化を続ける彼女たちの活動から、今後も目が離せない。


プロフィール

矢井田 瞳(やいだ ひとみ)
1978年7月28日生まれ、大阪府出身。19歳でギターと出会い曲作りを始め、2000年5月『Howling』でインディーズデビュー。同年7月『B’coz I Love You』でメジャーデビュー。2007年に結婚し、2009年に長女を出産。2025年8月に、デビュー25周年記念アルバム『DOORS』をリリース。

相川 七瀬(あいかわ ななせ)
1975年2月16日生まれ、大阪府出身。1995年『夢見る少女じゃいられない』でデビュー。数多くのヒット曲を世に送り出し、現在までのCDのトータル売り上げは1200万枚を超える。2020年に國學院大學神道文化学部を受験し合格。卒業後、同大学院に進学。2025年11月8日、ミニアルバム『FIREWORKS』をリリース。