明治時代、日本を訪れたアメリカの動物学者、エドワード・S・モースは、日本の日常生活の中に息づく美しさに深く感銘を受けました。彼の著書『日本その日その日』には、当時の日本の風景や人々の暮らしが生き画のように描かれています。今回は、モースの目を通して見た日本の美意識、特に彼が心を奪われた「障子の桜」について探求します。
エドワード・モースと日本の出会い
1877年、腕足類の研究のために来日したモースは、2年間の滞在中に大森貝塚を発見するなど、日本の学術界に大きな影響を与えました。しかし、彼の功績はそれだけではありません。『日本その日その日』には、研究者としての視点だけでなく、一人の旅人としての感性で捉えた日本の魅力が綴られています。
田舎の風景に息づく美
モースは日光への旅で、日本の田園風景の美しさに心を奪われました。綺麗に掃きかれた歩道、趣味の良い調度品、可愛らしい茶碗や急須、木目の美しい鏡板、花を生けるための木質のきのこ。彼は、これらの品々が普通の農家にさえあることに驚き、日本人の芸術的性情の高さを称賛しました。
alt=綺麗に掃き清められた日本の家屋と庭。調度品も美しく整えられています。
障子の穴を桜の花びらで飾る日本の心
モースが特に感動したのは、障子の破れた穴を桜の花びらの形の紙で繕うという、日本人の繊細な心遣いでした。彼は、自国アメリカでは破れた窓ガラスを古い帽子や袋で塞ぐのと比較し、日本人の美意識の高さに感嘆しました。 食文化研究家の山田太郎氏（仮名）は、「この逸話は、日本人が古来より自然を愛し、身近なものに美しさを見出す感性を持っていたことを示す貴重な例です」と述べています。
機能性と美しさの調和
モースは、日本の道具にも注目しました。人力で動かす臼や、稲の殻を取り除く踏み槌など、シンプルな道具の中に、機能性と美しさの調和を見出しました。 これらの道具は、長い歴史の中で洗練され、日本の風土に根ざした生活の知恵を象徴しています。
日本の美意識は現代にも息づく
モースが感動した日本の美意識は、現代にも脈々と受け継がれています。例えば、侘び寂びの精神や、自然との調和を重んじる考え方は、現代の建築やデザインにも影響を与えています。 生活空間研究所の佐藤花子氏（仮名）は、「現代社会においても、日本人の美意識は、日々の暮らしを豊かにする重要な要素となっています」と指摘しています。
まとめ：モースが見た日本の心
エドワード・モースの観察眼を通して、明治時代の日本の美意識が鮮やかに蘇ります。障子の桜は、単なる修繕ではなく、日本人の自然への畏敬の念と、生活の美を追求する心を象徴しています。 私たちも、日常生活の中に潜む小さな美しさに目を向け、日本の伝統文化の奥深さを再発見してみませんか。
