東京と新庄を結ぶ「山形新幹線」と、東京と秋田を結ぶ「秋田新幹線」は、「ミニ新幹線」と呼ばれることがあります。
【画像】サイズが違う! E5系と連結して走る「ミニ新幹線」車両E6系
「ミニ」なのはその車体。通常の新幹線車両(「フル規格」車両)は、在来線よりも幅が広く、普通席は3+2列配置が可能な車体ですが、ミニ新幹線では、普通席では2+2列配置。通常の在来線と同等の車体幅です。
このような小さい車体が採用されたのは、既存の在来線を改修してフル規格の新幹線と直通運転を可能とするため。新線として新幹線を建設するには時間も費用もかかりますが、既存の在来線を改良するのであれば、速達性向上は限定的ですが、新幹線と直通する列車の運転が可能になり、利便性は向上します。ただし、車両寸法の規格は大きく変えることができないため、ミニ新幹線は在来線仕様の小さめな車体が使われています。
そんなミニ新幹線の車両ですが、特別なのは車体の幅だけで、他は普通の新幹線車両と同じ……かと思いきや、そんなことはありません。高速で走る新幹線と、急カーブもある在来線の両方に対応した性能が求められているのです。
たとえば台車。フル規格の新幹線区間では、時速200キロ以上の高速走行時に安定して走る必要があるため、直進性の良い性能が求められます。一方、在来線においては、半径300メートルのようなカーブにも対応する追従性、つまり「曲がりやすさ」の性能が求められますが、これは高速走行時の直進性とは相反する性能です。時速300キロ以上で走るE6系とE8系では、台車の曲がり具合を新幹線と在来線で変えられる仕組みを採用しており、400系・E3系よりも直進性能と曲線通過性能の両立が図られています。
また、新幹線では騒音対策が重要ですが、ミニ新幹線ではこれも課題となります。
現在「こまち」で活躍するE6系の登場前、JR東日本は試験車両として、フル規格タイプの「FASTECH360S」、ミニ新幹線タイプの「FASTECH360Z」を製作していました。いずれも時速360キロでの営業運転を目指す車両だったのですが、「Z」ではパンタグラフ用の防音カバーを可動式としていました。これは、車体幅の制限が厳しい在来線では格納し、高速走行する新幹線では騒音低減のため展開する、という機能を持たせたもの。しかし、万が一故障した際には走行継続(新在直通運転)が不可能となることから、本格採用を断念。E6系では固定式のパンタグラフカバーとなっています。
このほか、ミニ新幹線用の車両では、在来線区間に対応したパンタグラフや、在来線用の保安装置など、新在直通運転用のさまざまな機器を搭載。単なる小さい新幹線ではない、特別な仕様の車両となっています。
西中悠基