見るものをあっと驚かせる、あまりにも魅力的な一局がここでもまた誕生した。全国を8つのブロックに分け、エリア対抗の形式で行われる団体戦「ABEMA地域対抗戦2025 inspired by 羽生善治」の予選Bリーグ1回戦第1試合、関東A 対 中部が2月8日に放送された。第8局では、藤井聡太竜王・名人(王位、王座、棋王、王将、棋聖、22)が三枚堂達也七段(31)を相手に圧巻の終盤力を見せつけ勝利。全軍躍動して詰ましきる快勝譜に、解説陣は「何が起きた?」「恐ろしいですね…」と言葉を失っていた。
チーム中部の3勝4敗と後がなくなった状況で迎えた第8局。ここで登場したのが藤井竜王・名人だった。対する関東Aの三枚堂七段は、初戦の勝利からチームに流れを引き寄せると、ステージ2の第6・7局で連勝を飾る躍進を見せていた強敵だ。藤井竜王・名人は「カド番ということで追い込まれた状況になってしまいましたが、勝利を目指して粘り強く戦っていきたいと思います」と語り、対局へと向かった。
中部に残されたカードは藤井竜王・名人のみとなったが、解説を務めた遠山雄亮六段(45)は「(中部は)3勝4敗ですが、あまり追い込んだきがしないですね(笑)」。しかし、この巨壁を乗り越えなければ関東Aに勝利はないと、先手番の三枚堂七段は得意戦法の相掛かりで藤井竜王・名人に挑みかかった。
三枚堂七段の主張が通り、藤井竜王・名人を強気に攻め立て主導権を握られるやや苦しい展開に。しかし、苦しい中でも局面を複雑化させ活路を模索していた。遠山六段も「先手陣は堅さがあるので、勝ちやすい感じはする」とコメント。藤井竜王・名人は難度の高いラッシュをかけて激戦へと持ち込んだ。秒刻みの中で繰り広げられる戦いに、両軍メンバーも見守るしかない状況に。関東Aの控室では、佐々木勇気八段(30)が「詰まなきゃいいなー!詰まないでくれ〜!」と心配そうにモニターを見つめていた。
しかし、それが“フラグ”状態に。藤井竜王・名人が放ったのは、△9七銀。その一手により詰み筋が発動するという、電光石火の逆転劇を演じてみせた。これには解説陣も「え〜〜!?」「そんな…、そんな…」と言葉を失うしかない。“絶対に詰ます男”藤井竜王・名人が本領を発揮し、白星をもぎ取ってみせた。
藤井竜王・名人が土壇場で魅せた、あまりにも華麗な△9七銀の一手。遠山六段は、「自陣にいた駒が全部役に立って詰む。恐ろしいですね…。さすがの終盤力でした」と感服しきりの様子だった。これにはもちろんファンも大興奮。「何がおきた?」「きたーー!!」「逆ったじゃん」「え???」「つえええ・・・・」「かっこいい」「えぐっ」「伝説の97銀」「聡太かっこいい」「恐ろしい子」「電光石火!」とコメントが殺到したほか、パブリックビューイングが行われた東京・将棋会館の『棋の音道場』に詰め掛けた約100名の観客からは、歓声と悲鳴が上がっていた。
藤井竜王・名人は、「終盤までかなり押されて苦しい展開でしたが、何とか勝負手を放って最後時間がない状況でしたが、9七銀からの詰み筋を発見できて良かったです」とコメント。藤井将棋の魅力があふれる一局となった。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合は監督と出場登録棋士4人の計5人が参加。全員が1局ずつ指す「ステージ1」と、ステージ1で勝った棋士が負けるまで指し続ける「ステージ2」に分かれ、5人を先に倒した方が勝利チームとなる。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
ABEMA TIMES編集部