2024年7月の記録的な豪雨により甚大な被害を受けた山形県鮭川村。中でも、県内ブナシメジ生産の最大手を誇る2社が、この未曽有の災害から立ち上がることができず、廃業を決断するという痛ましいニュースが飛び込んできました。この記事では、豪雨被害の実情と、生産者たちの苦悩、そして今後の支援のあり方について深く掘り下げていきます。
70万本のブナシメジが全滅…再建断念の苦渋の決断
鮭川村中渡に拠点を置く「荒木バイオ」は、県内最大規模のブナシメジ生産会社として知られていました。しかし、2024年7月の豪雨で近くの川が氾濫。工場全体が濁流に飲み込まれ、生産設備は全て故障、培養室で大切に育てていた70万本ものブナシメジ菌入りの瓶も全滅という、想像を絶する被害を受けました。
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社長の荒木淳一氏は事業再開に向けて奔走しましたが、数億円規模に及ぶ再建費用を前に、断念せざるを得ない状況に追い込まれました。「国や県からの見舞金はありましたが、それはあくまで再建を前提としたもの。仮に再開できたとしても、投資に見合う収益を上げられる保証はなく、苦渋の決断でした」と、無念さをにじませます。
既存の支援策では不十分?生産者の声に耳を傾ける
鮭川村は、2024年9月に「局地激甚災害」の指定を受け、被災企業への金融支援が行われました。低金利融資など、中小企業の再建を後押しする制度ですが、荒木社長は「支援は十分ではなかった」と訴えます。「金利ゼロで融資を受けたとしても、元本は返済しなければなりません。到底、返済できる見込みはありませんでした」。
専門家の声:災害復旧支援の課題と展望
農業経済学者である佐藤一郎氏(仮名)は、「今回のケースは、災害復旧支援の難しさを浮き彫りにしている」と指摘します。「資金調達だけでなく、設備の復旧、従業員の確保など、多岐にわたる支援が必要不可欠です。事業規模に応じたきめ細やかな支援策を早急に検討すべきでしょう」。
荒木社長は、「企業が使いやすいまとまった支援金があれば、再建に踏み切れたかもしれない」と語ります。既存の支援策の枠組みを超えた、より実効性のある支援の必要性が問われています。
ブナシメジ生産量7割減…地域経済への影響も懸念
同じく鮭川村にある「深田農産しめじセンター」も、2025年5月までの出荷をもって廃業を決定。後継者不足も廃業の要因の一つとされています。
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この2社の廃業により、県内のブナシメジ生産量は約7割も減少する見込みです。地域経済への影響も大きく、関係者からは不安の声が上がっています。
今回の豪雨災害は、自然の脅威と、災害復旧支援の課題を改めて突きつけました。被災地の早期復興と、持続可能な地域経済の構築に向けて、行政、金融機関、地域住民が一丸となって取り組む必要があります。