ハンガリー日本人女性殺害事件:警察の初動対応に批判噴出、市民数百人が異例のデモ行進

ハンガリーで起きた日本人女性殺害事件。元夫による犯行とみられるこの痛ましい事件は、ハンガリー社会に大きな衝撃を与えています。今回は、事件の概要と、警察の初動対応への批判、そして異例の市民デモについて詳しく解説します。

遺体で発見された日本人女性、元夫が逮捕

2025年1月29日、ハンガリーの首都ブダペストにあるアパートで火災が発生し、日本人女性(43歳)が遺体で発見されました。当初、警察は失火と判断していましたが、その後の捜査でアイルランド国籍の元夫(43歳)が逮捕され、計画殺人の罪で訴追されました。

遺体で発見された日本人女性が住んでいたアパート遺体で発見された日本人女性が住んでいたアパート

被害女性は2年前に離婚し、2人の子供とともに日本への帰国を希望していました。しかし、子供のパスポートを元夫に取られており、帰国は叶いませんでした。在ハンガリー日本大使館にも相談していましたが、元夫と話し合うよう促されたとのことです。

警察の対応に批判殺到、異例の謝罪

被害女性の友人によると、女性は元夫からパソコンを奪われたことや「苦しんで死ぬだろう」といった殺害予告を受けていたことを警察に訴えていました。実際、女性は元夫からの窃盗と脅迫被害を訴え、昨年2回にわたり地元警察に相談していました。

しかし、被害女性の弁護士であるユリア・スプロンズ氏によれば、警察は当初から女性の訴えに否定的で、「これはハンガリーでは犯罪でも何でもない、バカげている」と発言したといいます。

この警察の対応の遅れが事件を招いたとして、批判の声が殺到。警察は異例の謝罪に追い込まれました。地元警察は「ハンガリー警察を代表して、憤慨し、気分を害し、不快に思われたすべての人々に謝罪します」とのメッセージを発表しました。

犯罪心理学者のアンドラーシュ・ケレケシュ氏(仮名)は、「ストーカー行為やDVに対する警察の認識不足が、今回の悲劇につながった可能性がある。被害者の訴えを軽視せず、迅速かつ適切な対応が不可欠だ」と指摘しています。

市民数百人が抗議デモ、警察署にメッセージ

2月8日、事件現場となったアパート前には、女性の友人や支援団体のメンバーら数百人が集結。女性が被害を訴えていた警察署に抗議のメッセージを貼り、対応の改善を求めるデモ行進を行いました。

デモ行進は、ドナウ川沿いに建つ国会議事堂まで続き、「警察は彼女を見捨てた」といった抗議の声が響き渡りました。ハンガリー国内で100人を超えるデモが行われるのは異例のことです。警察は、対応した警察官3人を対象に懲戒処分の調査を進めているとしています。

この事件は、ハンガリー社会におけるDVやストーカー行為への対策の遅れを浮き彫りにしました。今後の警察の対応改善、そして再発防止策に期待が寄せられています。