韓国銀行とIMFの共同研究報告書「AIと韓国経済」が注目を集めています。AIは少子高齢化による労働生産性の低下をカバーし、韓国のGDPを最大12.6%も押し上げる可能性があるというのです。しかし、同時に国内労働者の半数以上に影響を与えることも指摘されており、適切な対策が必要とされています。この記事では、AIが韓国経済に及ぼす影響と課題について詳しく解説します。
AIによる経済成長への期待
報告書では、AIが経済に与える影響を三つのシナリオに分けて分析しています。中でも注目すべきは、AIが労働力を代替・補完し生産性を向上させるシナリオ。この場合、全要素生産性は3.2%、GDPはなんと12.6%も増加するという結果が出ています。2023年から2050年の間にAI導入なしではGDPが16.5%減少するという予測もある中、AIの潜在能力は大きな希望と言えるでしょう。
alt
AI導入による労働市場への影響
AIの導入は経済成長の起爆剤となる一方、労働市場への影響も無視できません。国内労働者の51%が影響を受けると推定されており、「AI曝露度」と「AI補完度」という二つの指標で分析されています。AI曝露度はAIによる代替可能性、AI補完度は代替リスクからの保護の度合いを示します。
AIによるリスクの高い職種
AI曝露度が高く、AI補完度が低い職業群は全体の27%を占めています。通信関連の販売職、顧客相談や事務職、データおよびネットワーク専門家などが該当し、低賃金で失業リスクが高いとされています。韓国の有名経済学者、パク・ソンホ氏は、「これらの職種への支援策が急務である」と警鐘を鳴らしています。
AI活用で生産性向上を目指す職種
AI曝露度が高くてもAI補完度が高い職業群は約24%存在します。AIを活用することで生産性向上や賃金の上昇が期待できますが、AIに関する教育が前提となります。適切な教育プログラムの提供が、これらの職種の成長を促進する鍵となるでしょう。
個人の特性とAIの影響
AI曝露度は女性、高学歴、若年層で高い傾向があります。所得別では、高所得層ほどAI曝露度とAI補完度が共に高いという結果が出ています。これは、過去の技術革新が中所得層に集中して影響を与えたのとは対照的です。高所得層はAIを活用し、更なる生産性向上を目指す可能性が高いと言えるでしょう。
韓国のAI準備状況
韓国のAI準備指数は世界165カ国中15位。デジタルインフラ、イノベーションおよび経済統合、人的資本および労働市場政策、規制および倫理の4分野で評価されます。韓国はイノベーションおよび経済統合で3位と高い評価を得ている一方、人的資本および労働市場政策は24位と課題が残ります。
今後の課題と対策
専門家は、教育や再訓練プログラムを通じた労働市場の柔軟性向上と、脆弱な階層へのセーフティーネット強化の必要性を訴えています。AIの恩恵を最大限に享受し、負の影響を最小限に抑えるためには、個別対応型の政策が不可欠です。AI技術の進化と共に、社会全体の適応力も試されていると言えるでしょう。
