医療費が高額になった患者の自己負担を抑える「高額療養費制度」の上限引き上げが議論されるなか、ジャーナリストの小林一哉さんは、制度を利用して白内障手術を受けた。自己負担額はどうなったのか。小林さんがリポートする――。
■高額療養費の支給総額が膨張
医療費が高額になった場合に、患者の自己負担を抑えてくれる公的医療補助制度「高額療養費」の自己負担上限額の引き上げに批判が集中している。
この制度の恩恵を受けて、高額な治療を長期で続けるがん患者らが強く反発しているからだ。このため、政府は近く、修正案を示す方針である。
厚生労働省によると、自己負担上限額を引き上げるのは、高齢化や高額薬剤の保険適用などで高額療養費の申請件数が年々大幅に増加し、支給総額が膨張しているためだ、という。
結果として、現役世代を中心とした保険料の引き上げは避けられない状態にある。今回の自己負担限度額引き上げで、保険料は1人当たり1100〜5000円程度軽減される計算という。
■70歳で受けた白内障手術はわずか8000円
なかなか難しい問題であるが、筆者は昨年夏、70歳の誕生日を迎えたため、高額療養費制度の恩恵を受けることができた。白内障手術の費用が、高額療養費の「外来特例」の適用を受けて、たったの「8000円」で済んだのである。
白内障の両眼手術のおかげで、視力が0.02から0.2に回復、これまでの世界が一変して、快適な生活を手に入れることができた。
もし、70歳以上で目がかすむなどの白内障の自覚症状があるならば、すぐにでも良い眼科医を見つけて、最良の手術を行ってもらうことを勧める。もちろん、「高額療養費の外来特例」をちゃんと使い、格安の費用で手術を受けてほしい。
現在、70代人口は約2800万人と推定される。そのうち、中程度以上のある程度進行した白内障患者は、55%前後だという。つまり、1500万人程度に白内障手術が必要ということになる。
ところが、実際には、白内障手術を受けている人は、若者などを含めても年間100万人にも満たない。おそらくその大きな理由は、ほとんどの人が「高額療養の外来特例」などを知らないで、白内障の手術費用が高額だと思い込んでいるからだろう。
たった「8000円」という格安で白内障手術を受けることができる公的医療補助制度のカラクリを紹介していく。