少子化問題の本質:晩婚化ではなく非正規雇用の増加が鍵?

結婚、出産、そして子育て。人生における大きな喜びであり、社会の未来を担う希望でもあります。しかし、日本の少子化問題は深刻さを増すばかり。政府も「異次元の少子化対策」を掲げていますが、果たしてその対策は的を射ているのでしょうか?この記事では、経済アナリスト故・森永卓郎氏の著書『官僚生態図鑑』を参考に、少子化問題の真の原因を探り、具体的な解決策を探っていきます。

少子化の本当の原因に迫る

よく耳にする「合計特殊出生率」。1人の女性が一生に産む子供の数と思われがちですが、実は15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した数値です。「特殊」という訳語も、実は誤訳だったという興味深い逸話も。ともあれ、この数値が2.1を下回ると人口は減少していくとされています。2023年の合計特殊出生率は1.2と、かなり低い水準です。

晩婚化だけが原因ではない

かつては少子化の原因は晩婚化だと考えられていました。女性が社会進出するにつれ、出産を遅らせる傾向が増えたためです。しかし、この考えは誤りであることがすぐに判明しました。合計特殊出生率は、平均初婚年齢、完結出生児数(1人の女性が一生に産む子供の数)、そして生涯未婚率の3つの要因で決まります。近年のデータを見ると、晩婚化は進んでおらず、結婚した女性の完結出生児数も2人程度と、それほど変化はありません。

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未婚率の急上昇:結婚したくてもできない現実

少子化の真の原因は、生涯未婚率の急上昇です。女性は1985年の4.3%から2020年には16.4%へ、男性に至っては1985年の3.9%から2020年には25.7%へと大幅に増加しています。つまり、結婚したくてもできない人が増えているのです。

経済的理由が結婚の壁に

結婚できない大きな理由は、経済的な問題です。国土交通省の調査によると、20代〜30代男性の既婚率は年収と強い相関関係があります。年収800万円〜1000万円では44.0%であるのに対し、100万円台では5.8%、100万円未満では1.3%と、年収が低いほど既婚率が下がります。

非正規雇用の増加が影を落とす

非正規雇用の平均年収は約170万円。つまり、非正規雇用の男性は結婚が難しい状況にあると言えます。そして、1984年には15.3%だった非正規雇用率は、2023年には37.1%まで上昇しています。非正規雇用の増加が、少子化の大きな要因となっていることは明らかです。

少子化対策の未来

結婚、出産、子育てには、経済的な安定が不可欠です。安定した雇用と収入の確保こそが、少子化対策の鍵となるのではないでしょうか。「異次元の少子化対策」を掲げる政府には、非正規雇用の問題にも真剣に取り組む姿勢が求められます。結婚、出産、そして子育てしやすい社会の実現に向けて、私たち一人ひとりが問題意識を持ち、共に考えていく必要があるでしょう。