地球温暖化が引き起こす「水文気候のむち打ち」:干ばつと洪水の悪循環

近年、世界各地で干ばつと洪水といった正反対の異常気象が短期間で交互に発生する現象が目立っています。カリフォルニアの山火事後の洪水被害はその象徴的な例と言えるでしょう。一体何が起きているのでしょうか?この記事では、この「水文気候のむち打ち」現象について、そのメカニズムや影響、そして私たちにできることについて解説します。

「水文気候のむち打ち」とは?

「水文気候のむち打ち(ハイドロクライメート・ウィップラッシュ)」とは、干ばつと洪水のような極端な気象現象が短期間で交互に発生する現象を指します。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームが提唱したこの言葉は、まるで鞭のように急激に変化する水文気候の状態を的確に表現しています。

カリフォルニアの山火事跡に洪水が発生カリフォルニアの山火事跡に洪水が発生

UCLAの研究によると、20世紀半ば以降、3ヶ月以内に干ばつから洪水、または洪水から干ばつへと移り変わる事例が31~66%増加しています。地球温暖化による気温上昇が主な原因と考えられており、気温上昇は大気中の水蒸気量を増加させ、干ばつ時には地表を乾燥させ、降雨時には豪雨をもたらすのです。

世界各地で顕在化する「水文気候のむち打ち」

この現象はカリフォルニアだけでなく、中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、中国など、世界各地で確認されています。例えば、中国では2022年に深刻な干ばつと洪水が相次ぎ、農作物や水力発電に大きな影響が出ました。

気候専門家のKクライミット代表、パン・ギソン氏は、「国ごとに地形は異なるものの、大気が過剰な水分を含むことで問題が生じるのは世界共通の現象だ」と指摘しています。日本の春の東海岸も乾燥した風が吹きやすく、山火事が発生しやすい環境にあります。2023年4月の韓国の山火事多発も記憶に新しいところです。

ロサンゼルスの山火事の様子ロサンゼルスの山火事の様子

地球温暖化との関連性

地球温暖化は、大気の水分保持能力を高めることで、「水文気候のむち打ち」を深刻化させています。UCLAの研究では、地球の平均気温が3度上昇すると、3ヶ月以内に発生する「水文気候のむち打ち」の増加率は113%に達すると予測されています。

私たちにできること

「水文気候のむち打ち」は、地球温暖化がもたらす深刻な脅威の一つです。この問題に対処するためには、地球温暖化対策を強化することが不可欠です。省エネルギー、再生可能エネルギーの利用促進など、私たち一人ひとりができることから始めましょう。

専門家の見解

UCLA環境および持続可能性研究所のダニエル・スウェイン博士は、「今後5~10年の間に気候変動が加速し、『水文気候のむち打ち』現象が世界各地でさらに顕著になる可能性が高い」と警告しています。私たちは、この問題の深刻さを認識し、早急な対策を講じる必要があります。