下水管の腐食によって交通量の多い道路に突然、大きな穴が開いた! こうした事故はいつ、どこで起きてもおかしくないという。では、どんな場所が危険なのか。専門家に聞いた!
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■下水管の調査は危険と隣り合わせ!
埼玉県八潮市の道路が突然陥没し、走っていたトラックが直径約10mの穴に転落する事故が1月28日に発生した。この陥没の原因のひとつが下水管の腐食だという。
水環境問題の専門家で『水ビジネス 110兆円水市場の攻防』(角川書店)など多くの著書がある吉村和就氏が解説する。
「事故が起きた道路は県道の交差点で、地下に直径4.75mの下水管がカーブして設置されていました。下水管には、トイレや台所、風呂などの生活汚水や雨水が流れています。
設置されている下水管が真っすぐであれば汚水がスムーズに流れていきますが、曲がっていると流速の速い場所と遅い場所ができて、その遅い場所に糞便や食べ物の残りかすなどの有機物がたまってしまいます。
曲がり角に有機物がたまるとバクテリアが有機物を分解して硫化水素が発生します。そして、硫化水素が空気中の酸素と反応して硫酸になり、硫酸がアルカリ性の下水管を腐食させます」
その結果、下水管に穴が開き、その上にあった土砂が下水管に吸い込まれて道路が陥没したと考えられている。
今回、道路が陥没した場所の地下にあった下水管は、2021年の県の点検では、すぐに補修が必要な腐食は確認されていなかった。それなのになぜ事故が起きてしまったのか。吉村氏が続ける。
「15年に下水道維持管理指針が改正されて、腐食の恐れのある下水管は5年に1度の点検が義務化されています。
下水管の鉄筋が見えるほど腐食していたら、緊急に補修する必要があるA判定。表面が腐食していてコンクリートの壁の中にある小石や砂利などの骨材が見えていたら、5年以内に再検査が必要なB判定。今回の八潮市の下水管は、このB判定でした。
しかし、骨材が見えていてもそれが表面だけなのか、鉄筋の近くまで腐食しているのかという深さの測定はしていません」
現在の点検は〝見た目〟によるものだけというのだ。
武蔵野大学客員教授で『水道民営化で水はどうなるのか』(岩波ブックレット)などの著書がある水ジャーナリストの橋本淳司氏が語る。
「〝点検〟ではマンホールを外して下水管の中をのぞいたり、地上からビデオカメラを下水管に入れて映った映像で異常の有無を確認します。
一方で〝調査〟は異常の劣化状況を定量的に確認します。管路内に人が入って目視したり、管内検査ロボットを入れて地上から遠隔操作して調査します。本格的な調査は時間もお金もかかるんです」