立花孝志氏の保釈却下、神戸地裁が懸念する「圧力」とは

今年1月に死去した竹内英明元兵庫県議に対する名誉毀損の疑いで逮捕・起訴された『NHKから国民を守る党』党首、立花孝志被告(58)の保釈請求が却下されたことが明らかになりました。弁護側は11月28日に保釈を請求しましたが、12月2日に却下され、その後の準抗告も12月8日に棄却されています。年明けには保釈される可能性も指摘されていましたが、現時点ではその見込みは薄いようです。

保釈却下の背景にある「証拠隠滅・働きかけ」の懸念

神戸地裁は保釈却下の具体的な理由を公表していませんが、一部報道では、地裁が「被告による証拠隠滅や関係者への不当な働きかけの恐れ」を考慮したと報じられています。実際に、最近発生したある出来事が、この「関係者への不当な働きかけ」を想起させるものとして注目されています。

疑惑浮上:尼崎市議選ポスター代水増し請求問題

12月5日、一部地元紙が報じたところによると、今年6月の兵庫県尼崎市議選において、立花被告と『NHK党』所属の福井完樹(かんき)市議(54)ら3人が、選挙ポスター代を市に水増し請求した疑いで市民2人から詐欺容疑で刑事告発されていたことが判明しました。兵庫県警は11月19日に告発を受理しています。告発状によれば、初当選した福井市議は、『NHK党』関係者が代表を務める「ネット選挙株式会社」にポスター作成を依頼し、市に55万5984円を請求。全576枚作成されたポスターの単価は1枚当たり約965円となりますが、立花被告が昨年の県知事選で同社に依頼した際は1枚約130円だったと指摘されており、約48万円の水増し請求があったと主張されています。

名誉毀損容疑で逮捕され、保釈請求が却下されたNHK党党首の立花孝志氏名誉毀損容疑で逮捕され、保釈請求が却下されたNHK党党首の立花孝志氏

福井市議の発言が招いた波紋

この疑惑に対し、福井市議は自身のYouTubeチャンネルで何度か説明と反論を試みてきました。しかし、12月6日の動画では、「僕がこれ、黙っているとね、本当に立花さんがもっと重い罪を犯したことに言われたりとかするんですよ。だから、そうならないように、あの指示どおりで僕は動いているので」と発言。さらに12月8日に公開した動画では、告発者に対して「間違っていたなっていう形で(告発を)取り消してくれたらいいんですけれども。これがまだ残るようであれば、僕は今度は虚偽告発で、僕から訴えます」と発言し、続けて「告発するように、今、指示を受けてるのは、立花党首からそう言われてます」と、立花被告からの指示があったことを明かしました。

これらの発言は視聴者から「拘置所から外部に圧力をかけることができるということだから、保釈できなくなっちゃう」といったコメントが寄せられるなど、大きな波紋を呼びました。福井市議は翌9日にYouTubeを更新し、「誤解される表現があった」として、立花被告からの指示ではなく、自身が主体的に動き、弁護士を通じて立花被告から同意を得たものだと訂正しました。しかし、この一連の発言が立花被告の印象を悪化させたことは否定できないでしょう。

専門家が指摘する「関係者への圧力」の危惧

元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、この福井市議の発言が立花被告の保釈を遠のかせる要因となりうると指摘しています。FRIDAYデジタルの取材に対し西脇弁護士は、「立花被告の現在の起訴事実とは別の事案の話ではありますが、このことが立花被告をめぐる周辺事情として『立花被告の周囲には指示を出せば証人や事件関係者に圧力を及ぼしかねない人がいる』という危惧を裁判所に与える可能性は十分に考えられます。また検察側にとっても “この状況で立花被告を外に出したら、事件関係者に危険が及ぶ”と保釈に反対する理由になりえます」とコメントしています。

過去の発言と裁判所の判断

加えて、立花被告が過去の動画内で「刑務所に行っても、遠隔操作できるから何とかなるよ」と発言していたこともあり、裁判所が保釈申請を却下する判断を下したことは、こうした背景を鑑みると無理がないと言えるでしょう。今回の件は、「敵は後ろにいる味方だった」という皮肉な結末を示唆しています。