【主張】日韓関係 融和ポーズに騙されるな





G20国会議長会議に臨む文喜相韓国国会議長=4日午前、国会内(佐藤徳昭撮影)

 「徴用工」判決問題をめぐる韓国の文在寅大統領や文喜相(ムン・ヒサン)国会議長の最近の言動を見ても、対日関係改善の熱意は薄いと思わざるを得ない。

 安倍晋三首相は4日、文大統領に対して、昭和40(1965)年に締結した日韓請求権協定を守る原則に基づき、国際法違反の状態の是正を求めた。極めて妥当な姿勢である。

 国益を守り、真に健全な日韓関係を築くために、引き続き原則を貫いてもらいたい。

 両首脳は訪問先のタイ・バンコク郊外のホテルで11分間言葉を交わした。着席しての対話は1年1カ月ぶりだ。持ちかけたのは文大統領だが韓国側が非を改めるという表明はなかった。単なる融和のポーズに騙(だま)されてはならない。

 来日した文議長は、昭和天皇と上皇陛下に対する重大な非礼、侮辱を公式謝罪することもなく、日韓の企業などから寄付を募って元徴用工に支給する法案を検討中だと触れて歩いた。問題点ばかりの「提案」に応じてはならない。

 先の大戦下の徴用は当時の法令(国民徴用令)に基づくものだ。どの国でもあった合法的な勤労動員で、給与が支払われていた。

 日本の朝鮮統治時代をめぐる相互の請求権は日韓の協定で「完全かつ最終的に解決」され、国交が正常化した。その交渉過程で韓国側は、個人補償は韓国政府の責任で行うと明言もしている。寄付も含め、日本側が金銭を支払う必要は毫(ごう)もない。

 韓国最高裁の「徴用工」判決の悪影響は元徴用工の話に限らない。企業活動だけでなく日本の朝鮮統治自体を「不法」と断じ、個人請求権を認めた。国際条約を反故(ほご)にするこの判決をもとに、日本断罪の政治的道具として、理不尽な賠償訴訟が韓国で続出する恐れがある。文議長の「提案」はこの根本問題をなんら解決しない。

 韓国がつくり出した国際法違反の状態は、足して二で割るような妥協で解決できる問題ではない。日本の一部メディアなどには日韓双方に歩み寄りを求める声がある。事の深刻さを理解せず、韓国による不法行為の被害者である日本の立場を踏まえない愚論だ。

 日韓・韓日議員連盟は1日の合同総会で早期の首脳会談開催を求める声明を出した。まるで韓国側のペースだ。日本側が自国の立場を十分に主張したのか疑わしい。日本を守る議論が必要だ。



Source link