● マルちゃん「赤いきつね」CM 「女性の頬が赤い」から性的?
「非実在型ネット炎上」という言葉が注目を集めている。
【画像】これが性的!? 一部から批判された「赤いきつね」のアニメCM
東洋水産が2月6日に公開した「赤いきつね 緑のたぬき」のウェブCM《「ひとりのよると赤緑」 おうちドラマ編》が一部から「性的」「いやらしい」と批判された。しかし、それらの批判に対して、国際大学グローコム客員研究員の小木曽健氏がYahoo!ニュースのコメント欄で「典型的な非実在型のネット炎上」と指摘したからだ。
「何それ?」という人のため、わかりやすく言えば「炎上の粉飾」である。いや、「エア炎上」と表現したほうがピンとくるかもしれない。
いわゆる「炎上」というのは、昨今のフジテレビ問題のようにネットやSNSでの批判が殺到した状態を指す。一方、「エア炎上」の場合、批判をしている人たちは「殺到」というほどでもない。むしろ、肯定・擁護の人に比べて「少数派」であるケースも多い。
にもかかわらず、なぜ注目を集めることができるのかというと、ひとりひとりの「声」が大きい。いわゆる「ノイジー・マイノリティ」というヤツだ。彼らはSNSでかなり厳しい表現を用いて断罪したり、攻撃的な発言をしたりするので、メディアやSNSで取り上げられやすい。
つまり、「見て見て、世の中にはこんなことに怒ってる人がいるんだよ」とバズっているだけなのだが、いいねやリツイートのボリューム的に世の大多数が叩いている「炎上」状態だと勘違されてしまうのだ。
こういう「エア炎上」への対応は、企業危機管理の世界では10年以上前から課題になっていて、筆者もこれまで多くの企業から相談を受けてきた。そこで、さまざまな危機管理の専門家が現時点でベストとして採用をしているのが、「黙ってやり過ごす」という対応だ。ミもフタもない言い方をすると、「無視」だ。
それは今回の騒動で、なにもコメントを出していない東洋水産を見ても明らかだろう。
ご存じのない方のため、同社のウェブCMが「エア炎上」してしまった経緯を簡単に振り返ろう。まず、このCMはアニメである。
「アニメ」を用いた広告やPRは「諸刃の剣」として知られている。多くの人に馴染みがある表現なので、バズりやすいという半面、「女性の描き方」によって多くの企業が謝罪・撤回に追い込まれている。
なぜこんな死屍累々かというと、日本のアニメ界ではわりとオーソドックスな表現である、「幼さの残るビジュアルで極度に胸を誇張した女性」というものが、国際社会では「性の商品化」として批判・嫌悪の対象となってしまうからだ。また、これも日本人はそれほど気にしていない「明らかに未成年のような少女キャラクターが、ミニスカなど露出度の高いコスチュームを身にまとう」ような描写も世界では「児童ポルノ」という扱いだ。
では、東洋水産もそういう同じ轍を踏んでしまったのかというと、まったく違う。
女性が部屋でテレビドラマを視聴している。感動するような内容なのか、やがて女性の目から涙が溢れる。そこで「赤いきつね」が登場して、フタをあけて女性が泣きながら、うどんをすすったり、つゆを飲んだりしているのだ。
「えっ? それだけ?」と驚くだろうが、それだけだ。しかし、批判をしている人たちは、うどんを食べるしぐさや、熱々のうどんを食べる女性の頬が紅潮をしているところが「性行為を想起させる」として気持ちが悪いと批判をしているのだ。
この「少数派の感想」が、ネットニュースで大きく取り上げられて大バズりしてしまったというわけだ。
ただ、こういう状態になっても東洋水産は今日にいたるまで、何もコメントを出していない。なぜこのようなCMを制作したのか。頬が赤いのは性行為を想起させたのか、など説明や反論は一切していない。