カナダ総選挙:トルドー首相辞任とトランプ氏の影、波乱の行方は?

カナダで10月20日までに実施される下院総選挙は、トルドー首相の辞任表明とトランプ前米大統領の存在という二つの大きな要因によって、当初の予想を覆す展開を見せています。 自由党と保守党の支持率は拮抗し、選挙戦の行方は混沌としています。

トルドー首相辞任と自由党の巻き返し

これまで、トルドー首相率いる自由党の経済社会政策を批判してきた野党・保守党が優勢と見られていました。しかし、トルドー首相の辞任表明、そしてトランプ前米大統領によるカナダ製品への関税賦課の可能性が示唆されたことで、情勢は一変しました。世論調査会社ナノス・リサーチによると、保守党の支持率は39%、自由党は32%と僅差となっています。

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自由党は、保守党のポワリエーブル党首とトランプ前米大統領の類似性を強調する動画広告を公開するなど、反撃を開始。ポワリエーブル党首の「カナダが壊れた」という主張と、「カナダは世界で最も素晴らしい国」という主張の矛盾点を突くなど、攻勢を強めています。

自由党の次期党首候補には、フリーランド前副首相兼財務相とカーニー元カナダ銀行総裁が挙がっており、両者とも炭素税廃止とトランプ前米大統領への毅然とした対応を表明しています。イプソス・パブリック・アフェアーズのダレル・ブリッカーCEOは、トルドー首相の辞任によって自由党に党勢回復のチャンスが生まれたと分析しています。

保守党の戦略修正とカーニー氏の脅威

保守党は戦略を修正し、ポワリエーブル党首は「カナダ第一」の政策を推進すると表明。「壊れたカナダ」というフレーズの使用を止め、トルドー政権の経済政策や天然資源の活用失敗を批判するものの、抜本的な政策見直しは必要ないとしています。

一方、世論調査では、カーニー氏が自由党党首になれば、自由党と保守党の支持率がほぼ互角になるという結果も出ています。国際的な金融経験を持つカーニー氏は、政治家一筋のポワリエーブル氏とは異なる経歴を持ち、危機管理能力をアピールしています。

しかし、国民の生活費高騰や購買力への不安は依然として大きく、これが保守党にとって有利に働く可能性も指摘されています。元保守党事務方幹部のギャリー・ケリー氏は、国民の生活不安は自由党政権9年間の積み重ねによるものだと主張しています。

混迷深まる選挙戦、今後の展望は?

自由党は3月9日に次期党首を発表する予定です。カーニー氏は、党首に選ばれれば国民の信任を得るため早期の総選挙を求める可能性を示唆しています。そうなれば、知名度の低いカーニー氏への攻撃時間を確保できない保守党にとって、厳しい戦いとなるでしょう。

保守党は、カーニー氏をエリート層の一員として一般庶民とはかけ離れた存在だと印象づける戦略を展開しています。今後の選挙戦は、自由党の次期党首選び、そして各党の政策論争に加え、トランプ前米大統領の動向も大きな影響を与えることが予想され、予断を許さない状況が続いています。