米国の中国牽制で韓国造船業界に光明?大型商船市場奪還のチャンス到来か

米国が中国の造船・海運業界への牽制を強める中、韓国の造船業界に大きなビジネスチャンスが到来する可能性が出てきました。 中国企業への手数料賦課など、米国の新たな規制が韓国造船業界にどのような影響を与えるのか、そして大型商船市場の覇権奪還なるか、注目が集まっています。

米国、中国船舶・海運会社への規制強化

米国通商代表部(USTR)は、中国海運会社と中国製船舶を利用した海上輸送サービスに対して手数料を賦課する方針を明らかにしました。米国港に入港する中国海運会社の船舶には最大100万ドル、中国製船舶には最大150万ドルの手数料が課せられる予定です。これは、中国が不公正な手段で造船・海洋市場を席巻しているという米国の認識に基づく措置です。USTRのキャサリン・タイ代表は、中国の年間造船数が1700隻以上であるのに対し、米国はわずか5隻未満であることを指摘し、中国の優位性が公正な競争を阻害し、米国の経済安全保障リスクを高めていると主張しています。

中国の造船所中国の造船所

韓国造船業界に復活の兆し?

ブルームバーグ通信は、中国船舶の輸送コスト上昇により、韓国と日本の造船業界に新たな機会が生まれる可能性があると分析しています。現在、大型商船市場、特にコンテナ船やタンカーの分野では、中国が韓国や日本を凌駕し、世界的な覇権を握っています。2021年には、韓国は1万2000~1万7000TEU規模の大型コンテナ船の新規受注で中国と互角に競争していましたが、その後は中国に大きく水をあけられています。造船・海運市況分析企業のクラークソンズ・リサーチによると、2023年の全世界の大型コンテナ船新規受注シェアは、韓国が22%、中国が78%でした。特に1万7000TEU以上の超大型コンテナ船では、2023年以降、中国が新規受注を独占し、韓国は1隻も受注できていません。大型タンカー市場でも同様の傾向が見られます。 スエズ運河を通過できる12万5000~20万DWT級タンカー市場では、韓国は2022年に初めて中国に新規受注1位の座を明け渡し、20万DWT以上のVLCCでは、韓国の新規受注シェアは22%にとどまりました。

韓国の造船所韓国の造船所

専門家の見解

韓国輸出入銀行のヤン・ジョンソ首席研究員は、「米国の規制により中国船舶の輸送コストが増加すれば、世界の船主は韓国製のコンテナ船やタンカーの発注を再び増やす可能性がある」と分析しています。 造船業界専門家のパク・ミンチョル氏(仮名)も、「今回の米国の措置は、韓国造船業界にとって大きなチャンスとなるだろう。価格競争力だけでなく、技術力や品質でも優位性を発揮し、市場シェアを回復していくことが重要だ」と述べています。

軍艦市場への影響も

商船だけでなく、軍艦市場においても、米国は中国の海洋進出を牽制するために海軍力増強を図っています。米国防総省は、中国最大の国営造船会社である中国船舶工業集団(CSSC)をブラックリストに追加するなど、軍事的圧力を強めています。また、米海軍は「2025建造計画」に基づき、今後30年間で364隻の軍艦を購入する予定です。この動きも、韓国造船業界には新たなビジネスチャンスとなる可能性を秘めています。

韓国造船業界の今後の展望

米国の対中政策の変化は、韓国造船業界にとって大きな転換期となる可能性があります。価格競争力だけでなく、技術力、品質、納期厳守など、総合的な競争力を強化することで、失われた市場シェアの回復、さらには新たな市場開拓も期待できるでしょう。 今後の動向に注目が集まります。