2022年6月2日、大分県別府市の県道で発生し、大学生2名が死傷したひき逃げ事件に進展があった。大分県警は6月2日、これまで道交法違反容疑で重要指名手配していた八田與一容疑者(28)に対し、新たに殺人と殺人未遂の容疑を追加し、逮捕状を取得したと発表した。これにより、公訴時効が撤廃され、捜査は新たな局面を迎えた。事件発生からまもなく3年となる中での大きな動きだ。
大分県警提供、別府の大学生死亡ひき逃げ事件で殺人容疑が追加された八田與一容疑者(28)。
犠牲となった大学生の遺族や友人らが設立した「大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会」(以下、「願う会」)は、これまで時効のない殺人罪への容疑変更を求め、署名活動などを継続してきた。2023年9月には、容疑変更を訴えるため県警に刑事告訴を行っていた。その後の車の走行実験などにより証拠が積み重ねられ、殺意の立証が可能になったという。大手紙社会部記者は、当時の状況について次のように話す。「バイクで信号待ちをしていた大学生2名に対し、八田容疑者が運転する軽乗用車が追突し、当時19歳だった男子大学生が亡くなりました。捜査関係者によると、現場となった交差点にはブレーキ痕がなく、容疑者が制限速度40キロを大幅に超える猛スピードで車を衝突させた可能性が指摘されています。」
「願う会」は事件の早期解決を願い、逃走中の八田容疑者に関する情報提供を呼びかけ続けている。SNSなどを通じた精力的な活動により、5月末時点で9600件もの情報が寄せられている。今回、容疑への殺人罪追加と公訴時効の撤廃を受け、遺族は以下のコメントを寄せた。
遺族コメント全文「私たちの戦いは終わりません」
「私たちの願いがようやく形になりました。事件から3年。大きな岩が動き出しました。殺人罪としての捜査に漕ぎ着けるまで、これほど時間を要するとは思いませんでした。八田與一を捜すために費やしたこの3年間、共に活動してくれた『願う会』の仲間たち、そして署名やチラシ掲示にご協力くださった全ての皆様に心から感謝申し上げます。これからは、捜査体制がさらに強化され、逮捕に向けて、より一層の進展が期待されます。私たち『願う会』も、警察と連携し、新たな活動を展開していきます。八田與一が逮捕されるまで、私たちの戦いは終わりません。引き続き、どんな些細な情報でも構いませんのでご協力いただけますよう、心よりお願い申し上げます。」
遺族らが早期解決を強く願う一方、八田容疑者はいまも逃亡を続けている。警察も事件発生当日以降、その決定的な足取りを掴めていない状況だ。前出の全国紙記者は当時の状況と捜査について説明する。「事件当日の夜、現場付近の防犯カメラには、はだしのまま逃走する八田容疑者の姿が映っていました。また別府湾沿いでは、当時男が着用していたとみられるTシャツが脱ぎ捨てられているのが発見され、そこから本人のDNAが検出されています。県警はその日のうちに男の自宅や関係先を捜索するなど捜査を続けましたが、姿を現すことはありませんでした。事件以降、家族とも接触していないとみられており、捜査関係者によれば男の母親は『(息子に)早く出頭してほしい』と警察に伝えているそうです。」
過去には容疑者の祖父がNEWSポストセブンの取材に対し、「與一はもう死んでいると思っている」「事件を起こす必然性がない」などと語っていたが、“殺人犯”として指名手配されることに対し、男の家族らは今何を思っているのだろうか。かつて八田容疑者も生活していたという関係先を訪ねると、親族の女性が取材に応じたという。
公訴時効の撤廃により、警察の捜査体制は強化され、八田容疑者の逮捕に向けた動きが加速することが期待される。遺族や「願う会」の活動も引き続き、容疑者の早期逮捕を求める。