高額療養費制度見直し:石破首相の発言が波紋を広げる、国民の不安と制度の持続可能性の狭間で

高額療養費制度の見直しをめぐり、石破首相の答弁が物議を醸しています。制度の持続可能性と国民の負担軽減のバランス、そして命に関わる制度の在り方について、様々な意見が飛び交う現状を整理します。

石破首相、高額な薬剤名を挙げ財政の逼迫を説明

2025年2月21日の衆院予算委員会で、石破首相は高額療養費制度見直しの必要性を訴えました。がん免疫治療薬「オプジーボ」や白血病治療薬「キムリア」などの高額な薬剤が財政を圧迫している現状を説明し、制度維持の難しさを強調しました。

alt="衆議院予算委員会で答弁する石破茂首相"alt="衆議院予算委員会で答弁する石破茂首相"

この発言に対し、患者からは「薬を使う患者を傷つけた」といった批判の声が上がっています。看護師出身で自身もがんを患った経験を持つ立憲民主党の酒井菜摘衆院議員は、島根県知事の「国家的殺人」発言を引用し、制度見直しへの反対を訴えました。

受診抑制への懸念と制度維持のジレンマ

石破首相は、受診抑制を防ぐ必要性を強調しつつも、高額な薬剤による財政負担の増大を指摘。「キムリア」は1回で3000万円、「オプジーボ」は年間1000万円以上かかるケースが増加しており、10年間で7倍になっていると説明しました。これらの薬剤は画期的な治療法として期待される一方で、保険財政への影響は無視できない状況です。

医療経済の専門家である、東京大学医療政策学研究室の山田教授(仮名)は、「革新的な治療法の登場は喜ばしいことですが、同時にその高額な費用が医療制度全体の持続可能性を脅かす可能性も懸念されます。費用対効果を慎重に評価し、適切な制度設計を行う必要があります」と指摘しています。

負担と持続可能性のせめぎ合い

石破首相は、国民の負担軽減と制度の持続可能性のバランスが重要だと述べ、「ギリギリの接点」での結論だと説明しました。しかし、命に関わる医療制度において、費用のみを優先すべきではないという意見も多く、議論は尽きません。

alt="キムリアなどの高額医薬品"alt="キムリアなどの高額医薬品"

厚生労働省の資料によると、キムリアは従来の治療法が効かなかった白血病患者にとって大きな希望となっています。25歳以下の患者を対象とした治療ルールは、費用対効果や患者の予後などを考慮して決定されたものです。

今後の議論の行方

高額療養費制度の見直しは、国民の健康と生命に関わる重要な問題です。政府は、国民の不安を払拭し、安心して医療を受けられるよう、丁寧な説明と議論を尽くす必要があります。 今後の議論の行方に注目が集まります。