歌舞伎町のTOHOシネマズ周辺に集まる若者たち。「トー横キッズ」という言葉が生まれた2019年から、援助交際、暴力、オーバードーズなど、様々な問題がメディアで取り上げられ、社会問題となっています。しかし、解決の糸口は見えず、事態は混迷を極めています。jp24h.comでは、現場で取材を続けるライター・ツマミ具依氏が、トー横キッズのリアルな現状をお届けします。今回は、彼らと警察の複雑な関係性について迫ります。
減少する補導人数の背後に潜む情報戦
歌舞伎町のトー横キッズが集まるシネシティ広場
トー横キッズに取材を始めた当初、何度も聞かれた言葉があります。「あのー、“私服”ですか?」。「私服」とは、私服警官のことです。彼らは警察の存在を常に警戒し、「警察か聞かれたら正直に答えなきゃいけないんだって」と、警察官かどうかを確認してきます。中高生が警察を「私服」と呼ぶのは違和感がありますが、そこには独特の連帯感も感じられます。
警視庁の発表によると、2024年1月~11月のトー横周辺での補導人数は725人で、前年同期比で減少しています。しかし、これはトー横キッズ全体の数が減ったという単純な話ではありません。彼らが常に警戒しているのは「一斉補導」です。警察からの事前告知はありませんが、警察官を多く見かけたり、過去の傾向から予測したりすると、「今日、一斉補導があるらしいから気を付けて」と、互いに注意を呼びかけ合ったり、SNSで情報が拡散されたりします。一斉補導は、今や情報戦の様相を呈しているのです。
緊迫の一斉補導現場と芽生える仲間意識
22時には人だかりができていたトー横
12月7日に行われた一斉補導も、情報戦の末に行われました。22時には30人ほどのトー横キッズが集まっていましたが、23時には未成年者の姿は消え、数人の成人組だけが残っていました。23時過ぎ、複数の私服警官が現れ、地雷系ファッションの19歳女性に声をかけました。6人の警官に取り囲まれ、威圧感に満ちた状況の中、「わたし未成年じゃないんだけど」と訴える女性。身分証を提示し、持ち物検査にも応じますが、警察は引き下がらず、親への連絡を強要しました。
警察が去った後、仲間たちは「おつかれー」と声をかけ、別の仲間は「私服、あっちにもいるよ」と情報共有を行います。警察という共通の敵の存在が、彼らの仲間意識を強めていると感じました。
補導の効果と広がる警察への不信感
トー横キッズに声をかける私服警官
補導によって更生したケースもあるでしょう。しかし、そのような成功例は表に出ることは少なく、警察への不信感が広がっているのが現状です。一斉補導と同時に報道されるのは、未成年者誘拐の疑いで逮捕される大人たちのニュース。私自身も、取材中に危険な目に遭ったことがあります。
トー横キッズを取り巻く問題は、複雑に絡み合い、容易に解決できるものではありません。警察との攻防、そして生まれる歪な絆。彼らの現状を理解し、多角的な視点から問題解決に取り組む必要があると言えるでしょう。