現代社会において、小学校における「学校崩壊」が深刻な問題となっています。かつては高学年で発生するケースが多かった学級崩壊ですが、近年では低学年からもその兆候が見られ、学校全体に波及する「学校崩壊」へと発展するケースが増加しています。この記事では、ベネッセ教育総合研究所の庄子寛之主任研究員への取材に基づき、小学校における学校崩壊の現状と、その対策について詳しく解説します。
学校崩壊とは何か?学級崩壊との違い
「学級崩壊」とは、特定のクラスにおいて秩序が乱れ、授業が成立しない状態を指します。一方、「学校崩壊」は、この学級崩壊が複数のクラス、あるいは学校全体に広がり、学校機能が麻痺する深刻な事態を指します。学級崩壊では、担任教師の指示に従わない生徒も、他の教師や校長には従うケースが多いのに対し、学校崩壊では誰の指示にも従わず、事態の収拾が非常に困難になります。
alt="小学校の教室風景"
小学校における学校崩壊の特徴
中学校では「学年崩壊」から学校崩壊へと発展するケースが多いのに対し、小学校では担任教師の指導力不足やスキル不足が原因となるケースが目立ちます。例えば、授業中に歩き回る児童への不適切な指導が、児童の反発を招き、学級崩壊、そして学校崩壊へとつながるケースがあります。
また、音楽や図工などの専科教員の授業から学級崩壊が始まり、複数学年に波及するケースも報告されています。さらに、代替教員の不足や、問題行動を起こす児童への過剰な対応が、他の児童へのケア不足を招き、新たな学級崩壊の火種となることもあります。
低年齢化の背景:保護者の価値観の変化と教育環境の変化
小学校における学級崩壊の低年齢化の背景には、保護者の価値観の多様化と、幼稚園・保育園からの環境変化への適応の難しさがあると庄子氏は指摘します。
「先生の言うことは絶対」という価値観を持つ保護者が減り、「子どもの個性や自主性を尊重すべき」という考え方が広まる中で、学校教育への過剰な介入や、教師への不信感が増していることが、学級崩壊の発生を助長している可能性があります。
また、近年増加している主体的な活動を重視する幼稚園・保育園では、授業中に座って話を聞く習慣が身についていない子どもが増えており、小学校入学後に環境の変化に戸惑うケースも見られます。
学校崩壊への対策
学校崩壊を防ぐためには、学校全体で共通の指導方針を確立し、教員間の連携を強化することが重要です。また、保護者との信頼関係を構築し、学校教育への理解と協力を得ることも不可欠です。さらに、児童一人ひとりの特性を理解し、個別のニーズに応じたきめ細やかな指導を行うことで、問題行動の未然防止に努める必要があります。
学校、家庭、地域社会が一体となって、子どもたちの健全な成長を支える環境づくりが求められています。