東京都が水素市場の構築に本格的に乗り出しました。水素エネルギーは、燃焼時に水しか排出しないクリーンエネルギーとして、脱炭素社会実現の鍵を握ると期待されています。小池百合子都知事もその推進に熱心に取り組んでおり、東京都の取り組みは日本の水素社会実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。この記事では、東京都の水素市場の現状と未来、そしてその課題について詳しく解説します。
水素:クリーンエネルギーの旗手
水素は、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、地球温暖化対策の切り札として注目されています。世界では年間約1億トンもの水素が、石油精製やアンモニア製造などに利用されています。現状では、水素製造過程でCO2が排出されるケースが多いですが、製造方法を工夫することでCO2排出量を大幅に削減、あるいはゼロにすることも可能です。
CO2フリー水素の製造方法
中学の理科の授業で習った水の電気分解を覚えていますか?水を電気分解すると、水素と酸素が生成されます。この電気分解に再生可能エネルギーや原子力といったCO2フリーの電力を使用すれば、CO2を排出せずに水素を製造できます。この「グリーン水素」は、真のクリーンエネルギーとして期待が高まっています。
alt東京都が推進する水素市場:水の電気分解による水素製造のイメージ
水素社会実現への道:燃料電池車(FCV)
トヨタ自動車の「MIRAI(ミライ)」を代表とする燃料電池車(FCV)は、水素を燃料として走行するクリーンな自動車です。グリーン水素を使用すれば、製造から走行までCO2排出ゼロを実現できます。電気自動車(EV)もCO2排出削減に貢献しますが、FCVはEVに比べて航続距離が長く、大型車両への適用も容易というメリットがあります。長距離輸送を担うトラックやバス、さらには船舶や航空機などへの活用も期待されており、水素は未来のモビリティ社会を支える重要なエネルギー源となる可能性を秘めています。
FCVとEVの比較:長距離走行の優位性
EVはバッテリー容量の制約から長距離走行が難しいという課題を抱えています。一方、FCVは水素を充填することで長距離走行が可能となるため、大型車両や長距離輸送に適しています。物流業界の脱炭素化を推進する上で、FCVは重要な役割を担うと期待されています。
水素社会普及への課題:価格とインフラ
水素社会実現に向けた動きは加速していますが、普及にはいくつかの課題も残されています。その一つがFCVの価格です。政府の補助金制度はありますが、それでもガソリン車やハイブリッド車に比べて高価であることが普及の妨げになっています。
水素ステーションの不足
もう一つの課題は、水素ステーションの不足です。水素を供給するインフラ整備が遅れているため、FCVの利用者は給油に不便を感じています。水素ステーションの設置費用は高額であり、採算性も課題となっています。
今後の展望:水素市場の成長に向けて
東京都の水素市場への取り組みは、日本の水素社会実現に向けた大きな一歩です。価格やインフラといった課題を克服し、水素エネルギーの普及を促進するためには、官民一体となった取り組みが不可欠です。技術革新によるコスト削減、水素ステーションの整備促進、そして消費者への理解促進など、多角的なアプローチが必要です。
水素エネルギーは、地球環境を守り、持続可能な社会を築くための重要な鍵となります。東京都の取り組みを皮切りに、日本全体で水素社会実現に向けた機運が高まることを期待します。