「黄金の腕」を持つ男、ジェームズ・ハリソン氏永眠 ― 240万人の命を救った献血ヒーロー

オーストラリアで「黄金の腕を持つ男」として知られたジェームズ・ハリソン氏が、2月17日に88歳で永眠されました。ハリソン氏は64年間で1173回もの献血を行い、実に240万人もの乳児の命を救った、まさに献血ヒーローです。今回は、その偉大な功績と人生について詳しくご紹介します。

献血が生んだ奇跡:抗D抗体と胎児・新生児溶血性疾患

ハリソン氏の血液には、非常に稀少な「抗D抗体」が含まれていました。この抗体は、胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)の治療に不可欠なものです。HDFNは、母親と胎児の血液型不適合により、母体の抗体が胎児を攻撃してしまう病気です。深刻な場合は、胎児に脳障害などの後遺症が残ったり、死に至るケースもあります。ハリソン氏の血液から作られた抗D免疫グロブリンは、この恐ろしい病から多くの赤ちゃんを守ってきました。

ジェームズ・ハリソンさんが献血をしている様子ジェームズ・ハリソンさんが献血をしている様子

献血への情熱:64年間で1173回

ハリソン氏の献血への協力は、1954年に14歳で受けた大手術がきっかけでした。輸血によって命を救われた経験から、自身も献血の重要性を強く認識し、献血を始めるようになりました。その後、彼の血液に稀少な抗D抗体が含まれていることが判明し、1967年からは抗D免疫グロブリン製造のための血漿献血に協力することになりました。

右腕の奇跡:1163回の献血

驚くべきことに、1173回の献血のうち、1163回は右腕から行われました。ハリソン氏自身は「右腕は痛くなかった」と語っていたそうですが、針を刺される瞬間は決して見なかったといいます。この揺るぎない献血への情熱と、少しお茶目な一面も、彼の魅力の一つと言えるでしょう。

ジェームズ・ハリソンさんの右腕ジェームズ・ハリソンさんの右腕

家族への愛:娘も救われた命

ハリソン氏の娘、トレイシー・メローシップさんも、抗D免疫グロブリンの恩恵を受けた一人です。彼女は、「父の貴重な献血がなければ、今の私は存在しなかったかもしれない」と語り、父親の偉大な行いに感謝の意を表しています。ハリソン氏自身も、自身の献血によって救われた多くの家族の話を聞くことを大変喜んでいたそうです。

献血の大切さを改めて考える

ハリソン氏の献血への貢献は計り知れません。彼の献身的な行動は、私たちに献血の大切さを改めて考えさせてくれます。日本でも、輸血を必要とする患者さんは多く、献血への協力は常に求められています。この記事をきっかけに、献血について考えてみてはいかがでしょうか。

終わりに

ジェームズ・ハリソン氏の功績を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。彼の献身的な精神は、これからも多くの人々の心に生き続けることでしょう。