がん治療・第三の選択肢
手術、抗がん剤に次ぐ第三の選択肢・放射線治療。とりわけ炭素の原子核を光速近くまで加速し、がんに照射する重粒子線治療は、パワフルかつ病巣をピンポイントで叩けるため、以前は治療が難しかったがんにも効果が期待できる。
これまで肝がんや一部の大腸がん・前立腺がん・膵臓がんなどが保険適用だったが、’24年6月からは新たに、早期の肺がん、一部の局所進行子宮頸部扁平上皮がん・婦人科悪性黒色腫(メラノーマ)にまで拡大された。
「たとえば進行した膵臓がんは、周囲に転移しやすく手術で取りきるのが難しい。そのうえ、遠い臓器にまで転移していることに気づかず手術を終えて、「やり損」になるケースもままありました。そういった症例に対して、重粒子線治療が効果を発揮しています」(神奈川県立がんセンター重粒子線治療センター長の鎌田正氏)
線量3割アップの最新機器
最近では病巣に向けてより効率的に照射するため、最先端の設備も登場している。
「照射する側の本体を回転させることによって、360度どこからでも患部に重粒子線を当てられる『重粒子線回転ガントリー』の導入が始まっています。
これまで重粒子線は上か横からしか当てられなかったため、照射のたびに患者さんに体勢を変えてもらう必要があった。装置のほうを回せば、その負担は軽減できます。
また多方向からピンポイントに照射するため、従来よりも2~3割ほど線量を上げられることもわかってきました」(鎌田氏)
国内で設置されているのは、千葉県にあるQST病院(量子科学技術研究開発機構)と山形大学医学部附属病院のみだが、日本中に広まる日もそう遠くないだろう。
「週刊現代」2025年2月22・3月1日合併号より
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