王毅氏、日中関係改善への道筋を示唆も歴史問題で日本を牽制

日中関係の行方が注目される中、中国の王毅政治局員兼外交部長は、北京で開催された全国人民代表大会(全人代)に合わせた記者会見で、日中関係の現状と今後の展望について言及しました。本記事では、王毅氏の発言を紐解きながら、日中関係の課題と可能性を探ります。

戦後80年の節目、歴史認識の重要性を強調

王毅氏は、今年が戦後80年の節目であることに触れ、「歴史を忘れず、日本は平和的発展の道を歩み続けるべきだ」と述べ、歴史問題に対する日本の姿勢を改めて問いました。中国は今年を「抗日戦勝80年」と位置づけており、歴史認識の問題は日中関係における重要なファクターであることを改めて示唆しました。

王毅外相の記者会見の様子王毅外相の記者会見の様子

懸案事項への対応は「法に基づき」

日本が懸念を示している在中邦人の安全や日本産水産物の輸入規制については、「責任ある態度で法に基づいて対処する」と述べるにとどまりました。具体的な解決策には言及せず、今後の展開が注目されます。国際政治アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「中国側の具体的な行動が伴わない限り、日中間の信頼関係構築は難しい」と指摘しています。

台湾問題への言及、日本への警告

王毅氏は台湾問題にも言及し、「台湾が中国に返還されて80年になるが、日本にはいまだに自らの過ちを反省しない人がいる」と指摘。「台湾有事は日本の有事ではなく、台湾で問題を起こせば、日本にも問題を引き起こすことになることを肝に銘じておくべきだ」と警告しました。この発言は、日本政府の台湾への関与に対する牽制と捉えることができます。

長い交流の歴史と未来への展望

一方で、王毅氏は「中日には長い交流の歴史があり、中国が日本にもたらしたのは脅威ではなくチャンスであったことを日本が最も理解しているはずだ」とも強調。歴史的な繋がりを踏まえつつ、「歴史の大きな変化に直面して、隣人としてのあり方はどうあるべきか。日本の有識者はよく考え行動すべきだ」と述べ、日本国内の中国に対する批判的な世論への牽制も忘れずに行いました。

関係改善への期待と課題

昨年の全人代に合わせた記者会見では、日本メディアへの質問機会が設けられず、日中関係への言及もありませんでした。今年は王毅氏が日中関係について具体的な発言を行ったことは、関係改善への糸口を探る姿勢の表れとも解釈できます。しかし、歴史認識や台湾問題など、依然として両国間には多くの課題が残されています。今後の日中関係は、両国政府の外交努力、そして国民レベルでの相互理解にかかっていると言えるでしょう。