ゲド戦記、興行収入78.4億円の大ヒットの裏で、原作とは異なるストーリー展開に賛否両論が巻き起こりました。厳しい評価を下した原作者アーシュラ・K・ル=グウィン氏でさえも心を奪われたもの、それは菅原文太さんの声と手嶌葵さんの「テルーの唄」でした。今回は、この名曲「テルーの唄」の誕生秘話に迫ります。
原作者が唯一絶賛した「テルーの唄」
映画「ゲド戦記」は、興行収入こそ成功を収めたものの、原作ファンからは厳しい声が上がりました。ル=グウィン氏も公式HPで「原作の精神に反している」と批判するほどでした。しかし、そんな彼女が絶賛したのが、主人公ゲドの声優を務めた菅原文太さんと、主題歌「テルーの唄」を歌った手嶌葵さんでした。特に「テルーの唄」については、アメリカ版の吹き替えでも原曲を使用してほしいと要望を出すほど惚れ込んでいたといいます。
ゲド戦記のワンシーン
デモテープから生まれた奇跡:10日間で完成した名曲
透明感のある歌声と深遠な歌詞で多くの人を魅了した「テルーの唄」。実は、この名曲がわずか10日間という驚異的なスピードで完成したことはあまり知られていません。
始まりは、当時18歳だった手嶌葵さんのデモテープが鈴木敏夫プロデューサーの手に渡ったことでした。偶然にもテープに収録されていたのは、鈴木氏が大好きなベット・ミドラーの「ローズ」。手嶌さんの歌声に心を奪われた鈴木氏は、萩原朔太郎の詩「こころ」を思い浮かべ、すぐに宮崎吾朗監督に「ゲド戦記」の主題歌の作詞を依頼したのです。
翌日には歌詞完成、作曲は谷山浩子
宮崎監督は「こころ」をヒントに、翌日には歌詞を完成させました。作曲はコンペ形式で行われ、シンガーソングライターの谷山浩子さんが選ばれました。そして、手嶌さんの歌入れを経て、歌詞完成からわずか10日後には歌入りのテープがジブリに届けられたのです。ちなみに谷山さんも中学生時代に「こころ」を愛読していたとのこと。不思議な縁を感じますね。
手嶌葵さん
萩原朔太郎「こころ」の影響と謝罪
「テルーの唄」発表後、歌詞と「こころ」の類似性が指摘され、鈴木氏は公式サイトで謝罪し、「こころ」を参考にしたことを公表しました。「こころ」を隠蔽する意図はなく、むしろ影響を受けたことを明かすことで、より多くの人に「こころ」の魅力を知ってもらいたいという思いがあったのかもしれません。
音楽評論家(架空)山田一郎氏のコメント
「『テルーの唄』は、一見シンプルなメロディーの中に、深い情感が込められています。萩原朔太郎の『こころ』からインスピレーションを受けた歌詞は、現代社会における孤独や不安、そして希望を繊細に表現しており、聴く者の心に深く響きます。まさに日本の音楽史に残る名曲と言えるでしょう。」
時代を超えて愛される名曲
「テルーの唄」は、人生における孤独や悲しみ、そして切なさを優しく歌い上げ、CD売上30万枚を超える大ヒットを記録しました。この名曲は、これからも多くの人々を魅了し続け、そして、萩原朔太郎の「こころ」を知るきっかけとなるでしょう。