ウクライナ紛争の早期終結を願う声が高まる中、トランプ前大統領が停戦仲介に乗り出したものの、そのロシア寄りともとれる姿勢やゼレンスキー大統領との会談決裂、そしてアメリカによるウクライナへの軍事支援一時停止は、欧州に大きな衝撃を与えました。今回は、この出来事が欧州の安全保障にどのような影響を与え、EUが打ち出した「ヨーロッパ再軍備計画」の背景にあるものを読み解いていきます。
アメリカ第一主義と揺らぐNATOの信頼
欧州の安全保障は、アメリカを中心とした北大西洋条約機構(NATO)に大きく依存しています。しかし、トランプ前大統領は「アメリカ第一主義」を掲げ、自国の利益を最優先する姿勢を鮮明にしてきました。グリーンランド買収やパナマ運河返還要求に見られるように、国際協調よりも経済的利益を重視する姿勢は、ウクライナ紛争への対応にも表れています。
ウクライナへの軍事支援一時停止も、NATO加盟国への事前の相談なしに行われたとされており、ポーランドをはじめとする欧州諸国からの批判を招きました。利益追求を優先する姿勢は、自由と民主主義、国際法遵守といった価値観を軽視しているように映り、欧州の安全保障に対するアメリカのコミットメントへの疑念を深める結果となっています。
alt="トランプ前大統領(写真:REX/アフロ)"
欧州の危機感と再軍備計画始動
アメリカの信頼が揺らぐ中、欧州は自らの防衛力強化へと舵を切りました。EUのフォンデアライエン委員長は、2024年3月、「ヨーロッパ再軍備計画」を発表。最大8000億ユーロ(約125兆円)という巨額の資金を投じ、欧州の防衛力強化を目指す計画です。
この計画は、加盟国による兵器調達のための最大1500億ユーロ(約23兆円)の融資枠設定と、EUの財政規律緩和による加盟国の防衛費追加支出(4年間で6500億ユーロ)を柱としています。新型コロナウイルス感染拡大時と同様に、EUは「免責条項」を発動し、財政赤字や債務残高に関するルールを一時的に停止。加盟国は罰則を受けることなく、防衛費を増額できるようになりました。
alt="フォンデアライエン欧州委員会委員長がヨーロッパ再軍備計画を発表"
再軍備計画の目的と課題
この大規模な再軍備計画は、ロシアのウクライナ侵攻という現実を前に、欧州が自らの安全保障を強化する必要性を強く認識した結果です。 国際政治学者である(架空の)山田教授は、「アメリカへの依存を減らし、欧州独自の防衛力を強化することは、今後の国際情勢において極めて重要だ」と指摘しています。
しかし、巨額の資金をどのように効率的に活用するのか、加盟国間の協調をどのように進めるのかなど、計画の実現には多くの課題も残されています。 欧州の安全保障の未来は、この再軍備計画の成否にかかっていると言えるでしょう。
欧州の未来と日本の安全保障
ウクライナ紛争と欧州の再軍備計画は、日本の安全保障にも大きな示唆を与えています。 アメリカへの依存度が高い日本も、自主的な防衛力強化の必要性を改めて問われていると言えるでしょう。 今後の国際情勢を注視し、戦略的な対応が求められています。