中国市場で存在感を失いつつある日系自動車メーカー。その象徴的な出来事として、日産自動車が中国江蘇省常州市にあった東風日産の工場を閉鎖しました。この記事では、その背景にある中国自動車市場の激しい競争、そして日本企業の「脱中国」の動きについて解説します。
閑散とした常州工場:日産の苦境を映す鏡
かつて活気に満ち溢れていた常州工場は、今ではひっそりと静まり返っています。2020年に稼働を開始したばかりのこの工場は、日産の中国生産能力の約1割を担う重要な拠点でした。しかし、わずか4年弱で閉鎖という憂き目に。工場の門にあった看板は取り外され、残っているのは入り口に残る「東風日産」の文字だけ。かつて350人もの従業員で賑わっていた工場は、今では数人による残務整理のみが行われているという寂しい状況です。
閑散とした日産常州工場
工場閉鎖の背景には、日産の中国市場における苦戦があります。10年代にはシェアを拡大していた日産ですが、近年は電気自動車(EV)への対応の遅れから、中国メーカーにシェアを奪われています。2024年の中国での新車販売台数はピーク時の半分にまで落ち込み、6年連続で前年割れという厳しい現実を突きつけられています。
中国自動車市場の激変:EVシフトと中国メーカーの台頭
中国自動車市場は、EVシフトという大きな変化の波の中にあります。中国メーカーは積極的にEV開発を進め、価格競争力と技術力で日系メーカーを圧倒しつつあります。日産だけでなく、トヨタ自動車やホンダも中国メーカーの攻勢に苦戦を強いられています。
例えば、ホンダは広州市の一部工場を閉鎖し、武漢市の工場でも一部生産ラインを休止しました。「中国自動車市場専門家」(仮名)は、「中国市場で生き残るためには、EVへの迅速な対応と、中国消費者のニーズを捉えた商品開発が不可欠」と指摘します。
かつての東風日産の文字
脱中国の波:自動車業界だけではない撤退の動き
中国から撤退、あるいは事業縮小の動きは、自動車業界に限ったことではありません。ヤクルト本社も上海市の工場を閉鎖し、中国の別の拠点に生産を集中することを発表しました。人件費や原材料費の高騰、地政学リスクの高まりなど、企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
こうした状況を受け、日本企業の間では「脱中国」の動きが加速しています。生産拠点を東南アジアなどに移転する企業も増えています。今後の中国市場における日本企業の戦略は、更なる変化を遂げていくでしょう。
まとめ:岐路に立つ日系メーカー
日産の常州工場閉鎖は、中国自動車市場の激変と日系メーカーの苦境を象徴する出来事です。EVシフトへの対応の遅れ、中国メーカーの台頭、そして脱中国の波。日系メーカーは今、大きな岐路に立たされています。今後の動向に注目が集まります。