ウクライナ終戦へ、サウジで米ウクライナ高官級協議 鉱物協定が鍵となるか?

ウクライナ紛争の終結に向けた動きが再び活発化しています。米国とウクライナは、サウジアラビアを仲介役として高官級協議を再開。焦点は、両国にとって利益となる鉱物協定です。この協議が終戦への突破口となるのか、世界が注目しています。

サウジアラビアで米ウクライナ高官級協議開催

8月11日、サウジアラビアのジッダで、ルビオ米国務長官率いる米国代表団と、イェルマク大統領秘書室長率いるウクライナ代表団による高官級協議が開催されました。議題は、ウクライナ紛争の終結に向けた提案と、鉱物協定など。米国からはルビオ国務長官、ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)らが、ウクライナからはイェルマク大統領秘書室長、シビハ外相、ウメロフ国防相らが出席しました。

ゼレンスキー大統領は、会談に先立ちサウジアラビアのムハンマド皇太子と会談し、終戦交渉について意見交換を行いました。米国務省によると、ゼレンスキー大統領自身は今回の高官級協議には参加していません。

ゼレンスキー大統領とムハンマド皇太子の会談の様子ゼレンスキー大統領とムハンマド皇太子の会談の様子

ゼレンスキー大統領は会談後、SNSで「戦争を終結させ、信頼できる持続可能な平和を確保するために必要な段階と条件について詳細に議論した」と述べ、ウクライナの立場は「完全に建設的」であり「実質的な結果」を期待すると表明しました。

米国の思惑:鉱物協定とウクライナ再建

今回の会談は、7月末のトランプ大統領とゼレンスキー大統領のホワイトハウスでの会談が決裂して以来、約2週間ぶりのものです。前回の会談は物別れに終わり、トランプ大統領はウクライナが「平和に向けた誠実な約束」を示すまで軍事支援を中断すると表明しました。

米国は、ウクライナが鉱物開発などで得る収益の50%をウクライナ再建のための共同基金に拠出することを骨子とした鉱物協定の締結を望んでいます。トランプ大統領は、この件に関して「今週多くの進展があると信じている」と述べています。

ウクライナ側の譲歩:部分停戦案提示の可能性

ゼレンスキー大統領は、米国のウクライナ安全保障への要求から一歩後退した姿勢を見せています。フィナンシャル・タイムズによると、ウクライナは今回の会談で部分停戦案を提示する計画とのこと。長距離ドローンとミサイル攻撃、黒海での作戦を中断する代わりに、米国の軍事・情報支援の再開を求めるという折衷案を検討しているようです。これは、これまで安全保障を停戦交渉の条件としてきたウクライナにとって、大きな譲歩と言えるでしょう。

ウクライナ軍のドローン運用ウクライナ軍のドローン運用

部分停戦合意が実現すれば、恒久的な停戦への道筋が開かれる可能性があります。米国は、ロシアへの制裁緩和を交渉材料として検討しているとの報道もあります。ブルームバーグは、トランプ大統領がロシア産原油価格上限など、戦争でロシアに課された制裁をどのように緩和するか検討していると報じています。

困難な立場に置かれるゼレンスキー大統領

ゼレンスキー大統領は、難しい立場に立たされています。「速やかな合意」を望むトランプ大統領の要求に応えつつ、「ロシアに譲歩できない」という国内世論にも配慮する必要があるためです。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ゼレンスキー大統領の支持率は戦争開始当初の90%以上から、昨年末には50%台にまで低下しています。

ロシア側の動向:ウィトコフ特使のロシア訪問

トランプ政権でウクライナ戦争の終戦交渉に関与するウィトコフ中東担当特使が、今週中にロシアを訪問し、プーチン大統領と会談する計画だとブルームバーグは報じています。実現すれば、米国とウクライナのハイレベル会談直後となる見込みです。

ウクライナによるモスクワへの大規模ドローン攻撃

ウクライナは、米国との会談を前に、モスクワに大規模なドローン攻撃を仕掛けました。ロシア国防省は、ロシア空軍が10地域でウクライナのドローン337機を撃墜したと発表。ブルームバーグは、この攻撃が2022年2月の開戦以来、モスクワに対する最大規模の攻撃だと報じています。

複雑な状況下での米ウクライナ高官級協議。今後の展開に注目が集まります。