年収が思うように上がらない就職氷河期世代は将来不安も大きい。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さんは「就職氷河期世代は社会に出るときに『割を食って』いるだけでなく、社会に出てからも、年を重ねてからも『割を食う』可能性が高い」という――。
※本稿は、永濱利廣『就職氷河期世代の経済学』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。
■就職氷河期世代は親の介護でさらなる「割を食う」
就職氷河期世代は社会に出る時も「割を食って」いますし、社会人になってからも思うように収入が伸びないという点で「割を食って」いますが、さらに年を重ねて親の介護に直面するようになるとさらに「割を食う」ことになります。
日本のような世界に例を見ないペースで高齢化が進んでいる場合、少子高齢化ということもあり、増え続ける高齢者を減り続ける現役世代で支える必要が出てきます。当然、介護サービスにかかる費用も増え続けています。実際「介護サービス支出」(図表1)を見ると、2021年がコロナの影響もあり突出していますが、それをのぞけば明らかに右肩上がりで増え続けていることがわかります。
■介護離職で生活の基盤を失う人も多い
就職氷河期世代は、今まさに親の介護の問題に直面しつつあります。そして介護に要する費用が増えるだけでなく、介護と仕事の両立や、なかには介護と仕事と育児を同時にという難題を抱え、時間的な負担も大きくなってきます。両立が難しく、家族を介護するために仕事を辞める介護離職者も増えており、こうしたケースでは介護に欠かせない経済的基盤を失うことになり、より厳しい状況に追い込まれることになるでしょう。
現在、日本では6000万人以上の人が働いており、その約3分の1は非正規雇用者です。非正規を選ぶ理由のトップは、都合のいい時間に働きたいですが、次の理由は育児や介護と仕事の両立となります。つまり、日本のシステムでは育児と仕事の両立は進みつつありますが、まだ十分とはいえず、「介護か仕事か」を迫られるケースも少なくありません。
日本では人手不足が深刻になっていますが、今後、高齢化が進むにつれて介護の問題はより深刻になり、本来なら働くことのできる人たちが介護のために充分に働くことができないという問題が起きる恐れがあるでしょう。