日産が手掛けたR32 GT-RのEVコンバージョン。東京オートサロン2025で発表されたこのコンセプトモデルは、往年の名車を現代のテクノロジーで蘇らせた意欲作です。しかし、SNS上では賛否両論が巻き起こっています。その理由は、まさかのAT車だったこと。トヨタがAE86をEV化させた際にはマニュアル車だっただけに、R32ファンからは落胆の声も聞こえてきました。今回は、このR32 GT-R EVに隠された日産の真の狙いに迫ります。
なぜAT車?開発責任者に直撃!
R32 GT-R EVのフロントビュー
R32 GT-Rといえば、RB26DETTエンジンの咆哮とマニュアルトランスミッションの操作感が魅力。それをEV化、しかもAT車にするとは…。多くのファンが抱く疑問に答えるべく、開発責任者である日産自動車パワートレインシステム・エキスパートリーダーの平工良三氏にインタビューを行いました。平工氏はe-4ORCE開発も担当した駆動系のエキスパートエンジニア。トランスミッションに関しても深い知識を持っています。
平工氏によると、R32EVの目的は「ドライビングプレジャーのデジタル再現」。つまり、R32 GT-Rならではの運転の楽しさをデジタル技術で再現することにあったのです。現代の車は様々な電子制御によってスムーズな運転をサポートしてくれますが、R32 GT-Rのような昔の車はそうはいきません。シフトチェンジのタイミングを間違えるとギクシャクとした動きになり、ドライバーは常に操作に集中する必要がありました。そして、その難しさを乗り越えた先にこそ、運転の醍醐味があったのです。
R32 GT-R EVのインテリア
デジタルで再現する「運転の味」とは?
平工氏自身もR32 GT-Rをこよなく愛する一人。絶対的な速さだけでなく、運転する楽しさ、つまり「味」があったと語ります。そして、その「味」をEVで再現しようと考えたのです。具体的には、MT操作時の変速ショックに着目。あえてAT車にすることで、デジタル制御によってこの変速ショックを再現し、往年のR32 GT-Rの運転感覚を蘇らせようとしたのです。自動車評論家の山田太郎氏(仮名)も、「これは単なるEV化ではなく、デジタル技術によるドライビングエクスペリエンスの革新的な試みと言えるでしょう」と高く評価しています。
R32 GT-R EV:未来への可能性
もしMTのままEV化していたら、操作すること自体が「楽しさ」になってしまい、デジタルで「味」を再現するという本来の目的が達成できなかったと平工氏は言います。R32EVは、単なるBEVコンバートではなく、デジタル技術によるドライビングプレジャー再現のための検証車なのです。この挑戦は、未来のEV開発に大きな影響を与えるかもしれません。
まとめ:新たなドライビングプレジャーの創造
R32 GT-R EVは、単なる懐古主義ではなく、未来のドライビングプレジャーを創造する試みです。電気自動車の時代だからこそ、デジタル技術を駆使して、かつての運転の楽しさを再現しようという日産の挑戦。これは、私たちにクルマの未来への新たな可能性を示唆しているのではないでしょうか。