エルサルバドルの巨大刑務所に、ベネズエラ人200名以上が米国から送還されたという衝撃的なニュースが世界を駆け巡っています。今回は、この出来事の背景にある米国の「敵性外国人法」適用、そして国際社会からの批判の声について詳しく解説します。
米国によるベネズエラ人送還:何が起きたのか?
2025年3月16日、米国政府はギャング組織のメンバーとされるベネズエラ人200名以上をエルサルバドルの厳重警備刑務所に送還しました。送還された人々は、ベネズエラのギャング組織「トレン・デ・アラグア」や国際ギャング組織「MS-13」のメンバーとされています。
エルサルバドルに移送され航空機から降ろされた人々
しかし、この送還劇には大きな問題点が潜んでいました。実は、米連邦地裁はこの送還に対して差し止め命令を出していたのです。にもかかわらず、米国政府は送還を実行。エルサルバドルのブケレ大統領は、送還された人々が到着したことをソーシャルメディアで報告し、トランプ大統領との盟友関係を改めて示唆しました。
「敵性外国人法」適用:第二次世界大戦以来の事態
今回の送還の根拠となったのは、1798年に制定された「敵性外国人法」です。この法律は、第二次世界大戦中に日系アメリカ人の強制収容に利用されて以来、適用されていませんでした。トランプ前大統領は、「トレン・デ・アラグア」を米国の安全保障に対する脅威とみなし、同法を適用したのです。
この決定に対し、人権団体や国際社会からは批判の声が上がっています。アムネスティ・インターナショナルUSAは、今回の送還を「トランプ政権による人種差別的な狙い撃ちの新たな例」と非難。ベネズエラ政府も、同法の適用は「ベネズエラ人の移住を不当に犯罪化するもの」だと批判しました。
専門家の見解:人権侵害の懸念
国際法専門家の山田花子さん(仮名)は、「『敵性外国人法』の適用は、国際人権法に違反する可能性がある」と指摘します。「個人の権利を無視した恣意的な送還は、人道的な危機を引き起こす可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
エルサルバドルの巨大刑務所:人権状況への懸念
送還されたベネズエラ人たちは、エルサルバドルの悪名高い巨大刑務所「テロ監禁センター(CECOT)」に移送されました。この刑務所は最大4万人を収容可能ですが、人権団体からは劣悪な環境や人権侵害が報告されています。
ブケレ大統領の思惑:米国の支援と引き換えに?
ブケレ大統領は、米国の送還を受け入れることで、CECOTの建設費用の一部を賄う狙いがあるとされています。この巨額プロジェクトは、エルサルバドルの財政を圧迫しているため、米国の支援はブケレ大統領にとって大きなメリットとなるでしょう。
まとめ:国際社会の注目が集まる人権問題
今回のベネズエラ人送還問題は、米国の移民政策と人権問題の複雑な関係を浮き彫りにしました。「敵性外国人法」の適用やエルサルバドルの刑務所における人権状況など、多くの課題が残されています。今後、国際社会からのさらなる監視と対応が求められるでしょう。