EU(欧州連合)が武器共同調達のための貸出金支援を拡大し、第三国での生産も対象に含めることになりました。一見、韓国の防衛産業にもチャンスが広がるように見えますが、実際には厳しい条件が課されており、恩恵は限定的となる可能性が高いとみられています。本記事では、EUの新たな武器共同調達計画の詳細と、韓国への影響について解説します。
EUの武器共同調達計画「SAFE」とは?
EUは、総額1500億ユーロ(約24兆円)規模の武器共同調達のための貸出金支援計画「SAFE(Security Action For Europe)」の詳細を発表しました。この計画は、EU加盟国が共同で武器を調達する際に、貸出金によって資金を支援するというものです。 この計画の大きな特徴は、EU加盟国だけでなく、EU加盟申請国・候補国、そしてEUと安全保障・防衛パートナーシップを締結した国も参加できる点です。韓国も日本、ノルウェーなどと共にこのパートナーシップを締結しているため、原則的には支援の対象となります。
EU本部資料写真
韓国への恩恵は限定的? 厳しい条件と課題
しかし、貸出金支援を受けるには2つの厳しい条件が課されています。1つ目は、支援を受ける第三国とEU加盟国が共同購入を進めるための「政府間合意」を締結すること。2つ目は、共同購入チーム内で、EU域外の防衛産業企業からの購入に関する別途の協定を結ぶことです。
これらの条件をクリアするには、韓国政府がEUの共同購入に直接参加するか、共同購入に参加する第三国が韓国製の武器を選択する必要があります。しかし、韓国政府は現在ウクライナへの殺傷武器支援を行っていないため、ウクライナ支援を目的とした共同購入への参加は難しいとみられています。
また、この計画は「欧州再武装」の促進を目的としているため、韓国政府が積極的に参加する可能性は低いでしょう。「日本の軍事評論家、田中一郎氏」は、「韓国政府がこの計画に積極的に参加するインセンティブは少ないだろう」と指摘しています。
韓国産武器の選定は容易ではない
もちろん、他の第三国が韓国産武器を選択する可能性はゼロではありません。しかし、韓国と同じ資格を持つノルウェーやトルコ、ウクライナなどは、自国の防衛産業に恩恵がある選択肢を優先する可能性が高いでしょう。競争は激しく、韓国産武器が選ばれる保証はありません。
EU旗
欧州再武装計画の一環としてのSAFE
この「SAFE」計画は、EUが発表した8000億ユーロ規模の「欧州再武装計画」の一環です。この計画には、貸出金支援の他に、各国が負債限度なく国防費を増額できるような措置も含まれています。欧州の安全保障環境が厳しさを増す中、EUは防衛力強化に力を入れています。 欧州の安全保障政策専門家である「マリア・デュポン氏」は、「この計画は、EUの防衛産業を活性化させ、域内の安全保障を強化するための重要な一歩となるだろう」と述べています。
まとめ
EUの新たな武器共同調達計画「SAFE」は、韓国の防衛産業にとってビジネスチャンスとなる可能性を秘めています。しかし、厳しい条件や競争の激化を考えると、恩恵は限定的となる可能性が高いでしょう。韓国政府と防衛産業は、この計画の動向を注意深く見守り、戦略的に対応していく必要があると言えるでしょう。