いずれ『マトリックス』が実現する?! 「意識」を解明した先にある世界


 「若返りを繰り返して生き続け、不死を得ることもできるだろう」

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 9月3日、中国・北京で行われた「抗日戦争勝利80周年記念式典」で習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が話したとされる内容だ。

 不老不死は、人類の「見果てぬ夢」であり続けている。

 エジプトのファラオは来世で生きることを願ってミイラになった。秦の始皇帝は不老不死の薬を求めて、徐福を東の海に旅立たせた。

 だが、現実には私たちの肉体は衰えていく。では、自分の「意識」だけを取り出して機械に移行できるとしたらどうなるのか──。

 こうした研究を進め、実現しようとしているのが、渡邉正峰・東京大学准教授だ。人類の「夢」に、私たちの手が届く可能性はどれくらいあるのだろうか。

 「あなたが今『見ている』この世界をスマホのカメラで写した時、果たしてそのカメラには、私たちと同じように、世界が『見えている』といえるでしょうか」

 不老不死について聞きたい小誌記者の思いをよそに、渡邉さんの取材は逆質問から始まった。確かに渡邉さんの著書『意識の脳科学「デジタル不老不死」の扉を開く』(講談社現代新書)の中で言及されているように、脳を構成する細胞も、スマホを構成する部品も、物質であることには変わりない。

 「スマホにも、私たちの脳にも、この世界を表す電気信号が映像として投影されているだけにすぎません。カメラの場合、レンズから取り込んだ光を電気信号へと変換しています。脳の細胞の情報処理も電気信号であり、化学物質のやり取りです」

 では、脳にだけ、今この世界が「見えている」という感覚が湧くのはなぜなのか。

 「人間の『意識』がどのようにして宿っているのかについては、いまだに謎のままです。私はこの謎を、科学者として、人生をかけて解き明かしたい」

 だが、この「意識の謎」は、古代ギリシア哲学以来、名だたる哲学者たちが、何百年、何千年にわたって挑戦してきた難題でもある。それをどう解き明かすというのか。

 「思考実験をしましょう。『もし〇〇だったら』と本気で考えてみる試みです。もしも、基となる材料が異なるだけで、私たちの脳とまったく同じ働きをする機械をつくることができたとしたら、その機械にも『意識』が湧くでしょうか。

 より具体的にいえば、脳の中の神経細胞を一つ、シリコンでできた機械細胞に置き換えて、また一つ、さらに一つと、ついに最後の一つまで置き換え終わった時に、『その脳に意識は湧くのか』ということです。

 オーストラリア出身の哲学者であるデイヴィッド・チャーマーズ氏は『きっと湧くだろう』と主張しています。かくいう私も、同じ立場です。このように、意識が湧くであろう機械を開発し、そこに意識が宿ったかどうかの実証実験を行うことで、『意識のハードプログラム』を解き明かすことが私の目指すところです」



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