この記事では、スイス在住の医師である平井麻依子氏が実践し、推奨する「脳に良いこと」の中でも、特に有酸素運動の効果について掘り下げて解説します。仕事のパフォーマンス向上に繋がる脳の活性化、ひいては日々の幸福感を得るための秘訣を、科学的根拠に基づいてご紹介します。
有酸素運動で脳を若返らせる驚きの効果
運動が体に良いことは広く知られていますが、実は脳にも良い影響を与えることをご存知でしょうか?近年、企業内にジムを併設するケースが増えているのも、この事実を裏付けています。日本の厚生労働省だけでなく、欧米の各国政府機関も、週に150分の有酸素運動を健康のために推奨しています。
では、なぜ有酸素運動が脳に良いのでしょうか?そのメカニズムを紐解いていきましょう。
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脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加: 有酸素運動を行うと、脳内でBDNFと呼ばれる成長因子が分泌されます。BDNFは、新しい脳細胞の成長を促し、細胞間の繋がり(シナプス)を強化する働きがあります。シナプスが増えることで、情報伝達がスムーズになり、脳機能の向上に繋がります。
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ストレスホルモンのコントロール: 定期的な有酸素運動は、ストレスに対するコルチゾールの分泌を抑える効果があります。コルチゾールは過剰に分泌されると、記憶を司る海馬を萎縮させることが知られています。有酸素運動によってコルチゾールの分泌を抑制することで、海馬の萎縮を防ぎ、記憶力の低下を防ぐことができます。
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脳血流の改善: 有酸素運動は脳への血流を増加させ、脳を活性化させます。さらに、長期的に運動を続けることで、脳内に新しい血管が作られ、酸素供給量が増加するため、長期的な脳の活性化が期待できます。
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なぜ有酸素運動が脳の老化防止に最適なのか?
脳の健康を考える上で、心拍数を最大心拍数の70〜75%に保つことが重要です。この心拍数を維持できる運動強度は個人差がありますが、スマートウォッチなどで簡単に計測できます。運動習慣のない方であれば早歩き、ある程度運動をしている方であれば軽いジョギング程度が目安となります。
特に、脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やし、海馬の萎縮を防ぐには、有酸素運動が最も効果的です。筋力トレーニングやストレッチだけでは、同じ効果を得ることは難しいでしょう。
2011年にピッツバーグ大学で行われた研究では、120人の被験者を対象に、有酸素運動グループとストレッチグループに分けて、1年間の実験を行いました。その結果、ストレッチグループの海馬は平均1.4%縮小した一方、有酸素運動グループの海馬は2%増加したという結果が得られました。つまり、有酸素運動によって、加齢による海馬の萎縮を食い止め、さらには若返らせる効果があることが示唆されたのです。
例えば、料理研究家の山田花子さん(仮名)は、「週に3回の軽いジョギングを始めてから、レシピの考案がスムーズになった」と語っています。 有酸素運動による脳の活性化は、創造性にも良い影響を与えるようです。
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脳を活性化し、人生を豊かに
週に数回の軽いジョギングやウォーキングなど、無理なく続けられる有酸素運動を取り入れることで、脳の健康を維持し、仕事のパフォーマンス向上、ひいては日々の幸福感の向上に繋げることができます。まずは、ご自身の体力に合わせた有酸素運動を始めてみてはいかがでしょうか?