AI時代の到来:10年前の予測は覆されたのか? 職種とAIの進化

10年前、野村総合研究所が発表した「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」というレポートは、社会に大きな衝撃を与えました。それから10年。生成AI技術の急速な発展を背景に、このレポートの予測が大きく外れていると話題になっています。果たして、AIは私たちの仕事をどのように変えつつあるのでしょうか?

予測の明暗:AIに代替される仕事、されない仕事

当時のレポートでは、「AIに代替される可能性が高い職業」と「低い職業」がそれぞれ100種類挙げられていました。介護職員、保育士、調理人などは代替可能性が高いとされていましたが、現在ではAIによる代替は難しいとされています。自動車整備工、配管工、建設作業員なども同様です。

一方、コピーライター、シナリオライター、グラフィックデザイナーといったクリエイティブ職種は、代替可能性が低いとされていましたが、既に生成AIによって一部の作業が代替され始めています。プログラマーやソフトウェアエンジニアでさえ、基本的なコーディング作業の一部が自動化されているのです。

代替可能性が高いとされていた職業の例代替可能性が高いとされていた職業の例

インターネット上では、「何が代替されるかなんてわからない」「ほとんど真逆になりつつある」といった声が上がっています。

コンテンツマーケターの現場:100人のライターがAIに

コンテンツマーケターのAさんは、5年前には100人以上のクラウドワーカーを抱え、SEO対策を施した記事を大量に作成していました。しかし、現在では外部ライターを一切使わず、編集部員もAさんともう1人のみ。その理由は、生成AIの活用です。

Aさんは、生成AIによって以前と同じ以上の質と量の記事を作成できていると言います。「朝、記事のカテゴリーを決め、生成AIにアイデアを投げかけると、すぐに15本ほどの案が出てきます。その中から選んでフィードバックし、10本のタイトルと構成を練り上げます。これで1時間ほどです。」

AIによる記事作成のイメージAIによる記事作成のイメージ

その後、1本あたり30分から1時間で記事作成からシステムへの入力を完了。もう1人の担当者が、画像生成AIで作成した画像を記事に貼り付けて公開します。Aさんは、「プロンプトの精度も上がり、思い通りの記事が一発で出てくることが多くなりました。AIのスピードは本当にすごいです」と語ります。

AIと人間の共存:未来の働き方

10年前の予測は大きく外れ、AI技術は想像以上のスピードで進化しています。フードライターのBさん(仮名)は、「食文化への深い理解や、五感を駆使した表現は、AIには難しいでしょう。しかし、レシピの考案や栄養価の計算などはAIが得意とするところです。AIと人間がそれぞれの強みを活かして協力していくことが重要です」と指摘します。

AIは私たちの仕事を奪う脅威ではなく、共に働くパートナーとなる可能性を秘めています。AI時代における働き方を模索していくことが、これからの社会にとって重要な課題と言えるでしょう。