「海に一番近い学校」として親しまれてきた、神奈川県横須賀市立走水小学校が、152年の歴史に幕を閉じました。2025年3月25日、惜しまれつつも閉校式が執り行われ、地域住民や卒業生など多くの人々が最後の別れを告げました。
1873年から続く歴史と伝統
走水小学校は、明治6年(1873年)に創設された歴史ある小学校です。当初は三つのお寺を借りて、「第一大学区神奈川県管内第十中学区相模国三浦郡第七十三番小学走水学舎」という長い名前で呼ばれていました。昭和5年(1930年)には現在の海に面した場所に校舎が新設され、その後、埋め立て工事を経て昭和50年(1975年)に現在の鉄筋校舎が完成しました。
走水小学校の校舎
閉校式での感動的な贈り物
閉校式では、6年生5人が統合後の馬堀小学校に通う後輩たちのために、手作りのモニュメントを贈呈しました。紙粘土やステンレスペーパーなどを用いて、統合後の学校をイメージして制作されたモニュメントには、子どもたちの「思いや願い」が込められています。代表の阿部凌大さん、野地良翔さんらは、モニュメント各部位の写真を示しながらその想いを説明し、「児童、保護者、地域、教職員とともに、より良い学校をつくっていきましょう」と力強く呼びかけました。
走水小学校の閉校式でモニュメントについて説明する児童
思い出と感謝の声
近所に住む80歳の卒業生の女性は、毎日二宮尊徳像を見ながら勉強に励んだ思い出を語り、「とても寂しい。地域で小学校の役割は大切」と閉校を惜しみました。また、市内在住の40代の姉妹は、海で泳いだり水平線を見つめたりする授業が印象に残っていると語り、「楽しい思い出がいっぱい。新しい学校に通う子どもたちも地域の良さを再確認してくれたら」と期待を込めました。
学校統合の背景と今後の展望
横須賀市教育委員会によると、走水小学校は馬堀小学校と、田浦小学校は長浦小学校とそれぞれ統合されます。これは、2022年に策定された「市教育環境整備計画」に基づき、学校規模の縮小や施設の老朽化、通学区域の課題などを考慮し、保護者や地域住民の意見を聞きながら決定されたものです。閉校した田浦小学校と走水小学校の今後の活用については、まだ未定とのことです。
防衛大学校からのエール
閉校式には、学校と交流のある防衛大学校の儀仗隊も参加し、学校と地域へのエールを込めた「ファンシードリル」を披露しました。地域全体で走水小学校の閉校を見守り、新たなスタートを応援する温かい雰囲気が会場を包みました。
閉校は一つの時代の終わりを意味しますが、同時に新たな始まりでもあります。走水小学校の歴史と伝統は、統合後の学校に引き継がれ、未来へと続いていくことでしょう。