台湾人と結婚し台湾に居住する中国人女性3人が、中国による台湾武力統一を支持するメッセージをインターネット上で発信したとして、台湾当局から居留許可を取り消され、国外退去を命じられました。この措置は、言論の自由の侵害にあたるのではないかという批判の声も上がっており、台湾社会で波紋を広げています。
中国武力統一支持で国外退去となった中国人女性インフルエンサー
45万人以上のフォロワーを持つ中国の動画投稿アプリ「抖音」(Douyin、ティックトックの中国版)のインフルエンサーである劉振亜氏は、自身の娘を出演させるなどして中台統一を訴える動画を頻繁に投稿していました。2022年5月に中国軍が台湾周辺で軍事演習を実施した際には、「明日の朝起きたら、台湾に五星紅旗(中国国旗)があふれているとうれしい」と発言したことも報じられています。
台湾の頼清徳総統
台湾の内政部移民署は、劉氏が「国家の安全保障と社会の安定に危害を与えた」として、関連法令に基づき台湾人の親族としての居留許可を取り消し、2023年8月25日までの退去を命じました。劉氏以外にも、同様の理由で2人の中国人女性に国外退去命令が出されています。
言論の自由の侵害か?台湾社会で波紋広がる
劉氏は「平和的統一を求めただけ」と主張し、当局の措置を批判。一時的に台湾に留まる意向を示しました。第2野党、台湾民衆党の立法委員(国会議員)からも「言論の自由の範囲内だ」と擁護する声が上がり、今回の措置は言論の自由を侵害するものであるという批判も出ています。
政府の対応と専門家の見解
一方、卓栄泰行政院長(首相)は、「最も重要なのは台湾の主権と尊厳を守ることだ。言論の自由には限度がある」と述べ、政府の対応を正当化しました。劉世芳内政部長(内相)も、劉振亜氏が中国の「法律戦、世論戦、心理戦」を展開していると非難しています。
台湾の安全保障専門家である林正義氏(仮名)は、「中国は様々な手段を用いて台湾への影響力を強めようとしており、今回の件もその一環と捉えるべきだ。言論の自由は重要だが、国家安全保障を脅かす行為は許されるべきではない」と指摘しています。
台湾の安全保障と認知戦:今後の課題
今回の事件は、台湾の安全保障と中国の認知戦という複雑な問題を浮き彫りにしました。台湾は今後、中国からの情報操作や影響力工作にどのように対応していくのか、そして、言論の自由とのバランスをどう保っていくのか、難しい舵取りを迫られています。
台湾と中国の軍事力の比較については、こちらの記事もご参照ください。