〈青く透き通る「仁淀ブルー」、ゴロゴロとした巨岩に落差20mの滝…高知県・中津渓谷で見た“地下迷宮のような異界”〉 から続く
【画像】「満席の場合は乗れません」過激なコミュニティバス観光を写真で一気に見る
高知県が全国でも珍しいコミュニティバスを使った旅を提案している。その第一弾として中津渓谷(仁淀川町)への観光を動画やHPで発信し始めた。だが、コミュニティバスは本数が少なく、ルートやダイヤ、接続を把握しにくい。それでも仕掛けを進めるのはなぜなのか。背景を探ると、地域社会の厳しい実情が見えてくる。
地域観光の課題
「高知県の観光はこれまで、歴史、食、自然を前面に出したキャンペーンを行ってきました。主要な観光施設の整備が進み、増客につながってはいるのですが、周りの地域はというと、そこまで周遊されていません」
県庁の地域観光課、齊藤弓子主幹が課題を解説する。
高知城、桂浜、維新の志士のゆかりの地、はりまや橋、室戸岬、足摺岬……。誰もが知るスポットだけでも書き切れないほどだ。しかし、有名な名所旧跡を巡るのが中心になっていて、地域をじっくり知ろうというスタイルの観光はそれほど多くない。これは全国に共通する傾向だろう。
「どっぷり高知旅」の魅力
2024年度から展開している観光キャンペーン「どっぷり高知旅」は、「四国カルストには人が来るけど、周辺にはあまり来てもらえない」というような声に応えるために始めた。
「有名観光地をあっさり巡る。それだけじゃ、もったいない。見たことのない、ど絶景。食べたことのない、ど名産。聞いたことのない、ど歴史。家族のように距離が近い人たちの、暑苦しいほどの、ど親切。ど級に濃厚な高知の魅力に、気がつけばハマっているはず。忙しい日常からちょっと離れて、どっぷり旅してみませんか」(「どっぷり高知旅」のパンフレットより)というのが主旨だ。
「どっぷり」味わってもらうための、コミュニティバス
「主に中山間地に光を当てて紹介しています。そうした地域の公共交通はコミュニティバスが担っていて、活用して回ってもらおうと考えました」と齊藤主幹が語る。
また、高知県を訪れる観光客の「足」は、自家用車や観光バス、レンタカーといった「車」が8割を占める。飛行機や列車で来て、公共交通機関で回る人は2割程度だ。そうした人にも「どっぷり」味わってもらうには、やはりコミュニティバスを使ってもらうしかなかった。
ただ、モデルコースを設定するには、他の交通機関にない苦労があった。