ウクライナ紛争の停戦に向けた新たな動きが注目を集めています。米国はロシア、ウクライナ両政府と、黒海における船舶の安全な航行の確保や武力不行使などで合意に至ったと発表しました。これはエネルギー施設に続く停戦範囲の拡大となる一方、ロシアは対露制裁の解除を発効条件としており、実現への道のりは険しい状況です。
米露ウクライナ3カ国合意の内容とは?
23日から25日にかけて、米国はロシア、ウクライナと個別に実務者協議を実施。その結果、黒海における商業船舶の軍事目的での利用禁止、武力行使の排除について3カ国が合意しました。また、既に合意済みのエネルギー施設への攻撃停止についても、着実な履行に向けた措置策定を確認。さらに、合意履行を支援する第三国による仲介も歓迎する姿勢を示しました。
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その他、米国はロシアとの間では、ロシアの農産物や肥料の輸出回復支援、ウクライナとの間では捕虜交換やロシアに連れ去られた子供たちの帰国支援でそれぞれ合意しています。これらの合意は、紛争解決に向けた重要な一歩となる可能性を秘めています。
ロシア側の要求とウクライナの反発
しかし、楽観視はできません。ロシア大統領府は、黒海での安全確保や武力不行使に関する合意の発効は、米欧による経済制裁の解除が条件だと主張。具体的には、ロシア農業銀行など食品・肥料貿易関連の金融機関のSWIFTへの復帰、食品・肥料生産者・輸出業者への制裁解除を求めています。
国際決済網SWIFTからのロシア排除は、対露制裁の柱の一つ。ロシアは、融和姿勢を見せるトランプ政権の仲介を利用し、譲歩を引き出そうとしていると見られます。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの姿勢を「合意のねじ曲げ、仲介者と全世界への欺瞞」と批判。合意不履行の場合には制裁強化や更なる圧力の必要性を訴えています。ウクライナ国防省も、合意履行と監視の詳細を詰めるための追加協議の早期開催を求める声明を発表しました。
停戦実現への課題と今後の展望
今回の合意は、黒海における緊張緩和の糸口となる可能性を秘めていますが、ロシアの制裁解除要求が大きな障壁となっています。国際社会は、人道危機の深刻化を防ぐため、ウクライナの穀物輸出再開を強く求めています。今後、米国を中心とした仲介努力が、停戦実現と黒海航路の安全確保に繋がるかが焦点となります。 食料安全保障の観点からも、黒海情勢の安定化は世界的な課題と言えるでしょう。今後の展開に注視していく必要があります。