【北京=西見由章】北海道大の40代の男性教授が9月、北京で中国当局に拘束された事件で、中国外務省の耿爽(こう・そう)報道官は15日の記者会見で「刑法と反スパイ法に違反した疑いで拘束していた男性教授を保釈した」と発表した。刑法の容疑は国家安全危害罪とみられる。日中両政府によると男性は同日、日本に帰国した。
耿氏によると、中国の国家安全当局が9月8日、男性教授のホテルの部屋を捜索したところ、「中国の国家秘密に関わる資料」が見つかったという。
さらに男性教授は「以前から中国側の大量の機密資料を収集していたと供述」し、「犯行の一切を認め、後悔の念を示した」としている。中国側は教授を訓戒した上で、改悛(かいしゅん)の意を示す書類を提出させたという。
関係筋の話を総合すると、男性教授は政府系シンクタンク、中国社会科学院近代史研究所の招聘(しょうへい)で9月3日に北京入りし、同17日に帰国予定だった。帰国時に北京の空港で拘束されたとの情報があったが「10日の発表会の直前に北京市内のホテルで拘束されたようだ」との証言も出ていた。
男性教授は中国政治が専門。防衛省防衛研究所や外務省に勤務した経歴があり、日中戦争史などの研究テーマに関連する資料を積極的に収集していた。
中国当局は2015年以降、スパイ行為に関与したなどとして教授以外にも日本人の男女計13人を拘束し、うち8人に実刑判決を言い渡している。