人生100年時代と言われる現代、誰もがいつかは迎える「死」について考える機会が増えています。人生の最終章をどう締めくくるか、どういった選択肢があるのか、関心が高まっているのではないでしょうか。この記事では、尊厳死と安楽死について、その概要と世界の現状、特にヨーロッパにおける法制化の動きを中心にご紹介します。
尊厳死と安楽死:それぞれの定義と違い
尊厳死とは?
尊厳死とは、延命治療を望まない意思表示に基づき、人工呼吸器や栄養補給などの延命措置を行わず、自然な経過に任せて死を迎えることです。あくまで自然死であり、苦痛を和らげる医療行為は継続されます。近年、日本でもリビングウィル(事前指示書)の作成が増加しており、自身の人生観に基づいた最期を迎えるための準備が進んでいます。
安楽死とは?
一方、安楽死は、苦痛を取り除き、死期を早める目的で行われる医療行為です。医師が致死薬を投与する「積極的安楽死」と、患者が自ら致死薬を服用する「医師幇助自殺」に分類されます。法的にも倫理的にも議論の多いテーマであり、世界各国で法整備の状況は大きく異なります。
尊厳死と安楽死の概念図
世界の安楽死:ヨーロッパで進む法制化の波
ヨーロッパでは、安楽死の法制化が急速に進んでいます。オランダは2002年に世界で初めて安楽死を合法化し、その後、ベルギー、ルクセンブルク、スペイン、ドイツ、オーストリア、イタリア、ポルトガルなどが追随しています。
イギリス:国民の支持を受け法案可決へ
イギリス下院は2023年11月末、安楽死法案を可決しました。余命6ヶ月未満の患者が、2人の医師と裁判所の同意を得た上で、医師から提供された致死薬を自ら服用することで、苦痛から解放され尊厳ある最期を迎える権利を認めるものです。世論調査でも7割以上の国民が法案を支持しており、上院での審議を経て成立する見込みです。
フランス:市民会議が安楽死是認
フランスでは、マクロン大統領が安楽死法案の国会審議を推進しています。無作為に選ばれた一般市民で構成される「市民会議」が、安楽死を是認する報告書を提出したことが背景にあります。国民議会選挙の影響で審議は遅延していますが、近い将来、採決が行われると予想されます。
オランダの安楽死:厳しい要件と医師の関与
オランダの安楽死法は、厳しい要件を満たす必要があり、医師の関与が非常に重要です。患者はまず、担当医に安楽死の意思を伝え、理解を得なければなりません。その後、別の医師の承認を得る必要があり、最終的には3人の医師の同意が必要です。また、死亡後には検視医が経過を確認します。
事例:転倒不安を抱えた高齢者の安楽死
オランダの診療所の所長によると、転倒不安を抱えた93歳の高齢者が安楽死を選択したケースがありました。リハビリを繰り返しても転倒は治らず、車いすの利用も拒否したため、本人の意思に基づき安楽死が執行されました。
終わりに
尊厳死や安楽死は、個人の尊厳、自己決定権、そして人生の最終段階におけるQOL(生活の質)やQOD(死の質)に関わる重要なテーマです。今後、日本でもこれらの問題について、より活発な議論が展開されることが期待されます。