昭和ウルトラマンの「ヒロイン途中退場劇」 ガッカリ展開の背景に“大人の事情”があった?


多くの視聴者をどん底に突き落としたヒロインの最期

【画像】えっ、スタイル抜群! こちらが麗しの「昭和ウルトラヒロイン」たちです(5枚)

 その最初のひとりであり、もっとも当時の子供たちに衝撃を与えたのが『帰ってきたウルトラマン』のヒロインだった「坂田アキ」の降板劇でしょうか。筆者たちリアル視聴世代には、いまだに忘れることのできないトラウマを与えました。

 アキは主人公である「郷秀樹」の恋人といえる存在です。郷が他の女性と一緒にいると焼きもちを焼くようなかわいいところもありました。郷とはデートをするなど、相思相愛の仲睦まじい関係が全編にわたって描かれています。

 そういう点では、凛々しさが前面に立ったMAT唯一の女性隊員「丘ユリ子」とは違った可憐さで視聴者にアピールしていました。ちなみに「ウルトラマン」シリーズとして、アキは初めての隊員ではない民間人のヒロインということになります。

 そんな戦いとは関係ない世界にいるアキですが、ヒロインとしてたびたび危険な目にあいました。「ツインテール」出現に伴う崩落事故で瀕死の重傷を負ったり、「ノコギリン」の殺人光線で危うく殺されそうになったりしています。

 そして第37話「ウルトラマン 夕陽に死す」で非業の死を遂げることになりました。それも「ウルトラマン」である郷を動揺させるため、侵略者「ナックル星人」の卑劣な作戦の結果というものです。

 実はこの退場劇には「大人の事情」がありました。アキを演じていた榊原るみさんの人気があり過ぎて、出演するためのスケジュール調整が困難になったからというものです。実際3クールに入って以降、名前のみの登場が多くなっていました。脚本を変更して登場場面をカットしたこともあったそうです。

 そういった事情から悲劇的な最期を遂げるというドラマが用意されました。郷の前で息絶えるアキの姿は思い出すだけで泣けてきます。その後、郷がウルトラマンに変身するのにビルから飛び降りるシーンは、まさに鬼気迫る迫力を感じました。

 結果的にナックル星人の卑劣な罠は成功し、心を乱されたウルトラマンは敗北したところで第37話は終わります。そういう意味でも第37話をリアル視聴した世代は、次回放送まで心の置き場がない日々を過ごしました。それゆえにトラウマといえるわけです。

 このトラウマを刷新したのが2008年に公開された劇場版『大決戦!超ウルトラ8兄弟』でした。ここで描かれたマルチバースの地球では、郷とアキが結婚し、娘までいる世界がオリジナルキャストで描かれています。この仲睦まじい姿を見て、37年ぶりに留飲を下げた人も多くいました。

「ウルトラマン」シリーズで明確な退場劇第1号となったアキですが、この後の昭和シリーズでは大なり小なりヒロインの途中降板は定番化してしまうのです。



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