ネタニヤフ首相、権力掌握へ高官次々解任 イスラエルで批判高まる

イスラエルのネタニヤフ首相による高官解任劇が波紋を広げています。治安機関や司法機関のトップが次々と更迭され、国民の間では首相の権力掌握に対する懸念が高まっています。ガザ地区での戦闘も続く中、この人事の背景やイスラエルの現状について詳しく解説します。

ネタニヤフ首相、高官更迭の真相

ネタニヤフ首相は、自身への捜査や政権の方針に批判的な高官を解任することで、権力基盤の強化を図っていると考えられています。その一例として、国内諜報機関シンベット(安全保障局)長官人事があります。首相は元海軍司令官を新長官に指名しましたが、彼が過去に司法改革反対デモに参加していたことが発覚し、わずか数時間後に指名を撤回するという異例の事態となりました。

エルサレムのデモの様子エルサレムのデモの様子

また、ハマスによる奇襲を防げなかった責任を問う形で、シンベットのロネン・バル長官を解任しました。最高裁判所がこの解任の是非を判断する予定でしたが、首相は既成事実化を図ろうとしたとみられています。後任人事は未だに決まっておらず、混乱が続いています。

カタールゲート捜査への影響

ネタニヤフ首相の側近2人がカタールからの資金提供疑惑で逮捕された「カタールゲート」捜査への影響も懸念されています。長官解任を急いだ背景には、この捜査を妨害する狙いがあったとの見方もあります。

エルサレムのデモの様子エルサレムのデモの様子

司法・国防分野での更迭劇

司法分野では、ネタニヤフ政権と対立してきたガリ・バハラブミアラ検事総長への不信任決議が可決されました。検事総長の解任には最高裁の判断が必要ですが、首相は解任への流れを作ろうとしているとみられています。

国防分野でも、ガザ地区での戦闘方針に異議を唱えたヨアブ・ガラント国防相、ヘルツィ・ハレビ軍参謀総長が相次いで解任・退任に追い込まれました。

専門家の見解

国家安全保障研究所のオフェル・シャラハ研究プログラム部長は、「ネタニヤフ首相は汚職裁判から逃れるため、あらゆる手段を使って首相の座に留まろうとしており、高官の解任もその一環だ。これは適切で安定した国家統治を脅かしている」と指摘しています。地元紙ハアレツも、首相の判断能力に疑問を呈しています。

ガザ地区での戦闘に関する年表ガザ地区での戦闘に関する年表

国民の抗議と政権の安定

ガザ地区の人質解放とネタニヤフ首相の「独裁化」に反対する大規模デモが各地で発生しています。国民の不安が高まる中、首相は過去最大規模の国防費を盛り込んだ今年度予算を可決させ、政権の安定化を図っています。任期満了となる2026年10月まで政権が続くとの見方もあります。

エルサレムの首相官邸付近でのデモの様子エルサレムの首相官邸付近でのデモの様子

イスラエルの未来は?

高官解任劇、ガザ地区での戦闘、そして国民の抗議。イスラエルは今、大きな岐路に立たされています。今後の動向に注目が集まります。