韓国ではユン大統領の弾劾騒動が終結したものの、観光業界の不安は払拭されていません。ソウル中心部での大規模デモの継続、山火事によるイベント中止など、様々な要因が重なり、内外の観光客数の減少が懸念されています。
デモの影響で観光客敬遠、売り上げ減少に悩む商店も
憲法裁判所周辺の商店では、弾劾審判の影響で売り上げが50〜80%減少しているという深刻な状況です。デモによる交通規制や安全面への懸念から、観光客、特に団体観光客の足が遠のいている現状が浮き彫りになっています。
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ソウル市鍾路区にある憲法裁判所前の歩道。観光客の姿はまばらだ。
旅行業界関係者は、「デモによる衝突や交通混乱を懸念する声が多数寄せられており、例年の繁忙期にもかかわらず問い合わせが激減している」と危機感を募らせています。団体観光客の減少は特に深刻で、道路の統制による移動の困難さ、文化体験の制限、追加費用の発生などが主な要因とされています。
中国人観光客の減少、免税店への打撃も
韓国観光公社の統計によると、2月に韓国を訪れた外国人観光客のうち、中国、香港、マレーシアからの訪問者数が前年同月比で減少しました。特に、訪韓観光客数・消費額ともに最多の中国からの観光客減少は、韓国経済への大きな打撃となっています。韓国免税店協会によると、2月の全国免税店訪問客数は2023年9月以来の最低水準を記録しました。
韓国国内の観光需要も低迷しており、2月の国内観光客数は前年比で減少。ソウル旅行の落ち込みが、この傾向に拍車をかけています。
イベント中止相次ぐ、地方観光にも暗い影
3月には全国的な山火事の影響で、地方の春祭りが次々と中止されました。桜祭りなどの人気イベントが中止・縮小されたことで、地方経済への影響も懸念されています。さらに、大統領選挙が近づくにつれ、選挙法により地方自治体のイベント開催が制限される可能性もあり、観光業界の先行きは不透明です。
専門家の見解
観光コンサルタントのキム・ヨンチョル氏は、「韓国観光の魅力は『安全で清潔』というイメージだったが、デモや社会不安によりそのイメージが損なわれている」と指摘。官民一体となったイメージ回復と安全対策強化の必要性を訴えています。
2019年水準回復への道のりは険しい
これらの状況を踏まえると、韓国観光業界が掲げる2019年水準の回復は困難な状況です。昨年12月の戒厳令発表時には、海外からの団体旅行キャンセルも発生しており、同様の事態の再発も懸念されます。特にMICE関連施設の多くがソウルに集中しているため、影響は甚大です。
旅行プラットフォーム関係者は、「韓国観光の魅力を取り戻すためには、安全対策の強化に加え、新たな観光資源の開発やプロモーション戦略の見直しが必要だ」と提言しています。
韓国観光業界は、社会不安の払拭とイメージ回復に向けて、官民一体となった取り組みが求められています。